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神話と歴史:ダラ・ハッパからルナー帝国へ

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1600年頃、路上学校で老教師が子供たちに語った話

■黄金の時代
 昔々、世界はたった「ひとつ」のものだった。わしらはそれを“創造主”とか、“一なるもの”とか呼んでおる。とは言っても、偉いダーゼイターの司祭様だってそれが何だったのかは説明できんのだが。

 さて、“一なるもの”は10の精霊を生んだ。この神々は「グローランテイ」とか「天宮の神々」と呼ばれておる。この神々がいろいろとやって、その結びつきからもっと弱い神々がたくさん生まれた。この〓多なるもの〓の神々があんまり多くなりすぎたものだから、“一なるもの”は疲れ果ててしまって、この世界から立ち去ることにした。だが、“多なるもの”は放っておいたら世界をめちゃくちゃにしてしまうだろう。そこで神々の中で一番優れた神イェルムは、“一なるもの”、すなわち「宇宙の皇帝」に任命された。イェルムは天空から地上へ降り立ち、宇宙山から平和で楽しみに満ちた「黄金の時代」という長く平和な治世をお始めになったのだよ。


■新しい歌
 イェルムは、あるとき「嫁取り試合」をおこなって、100の女神の中から一番相応しい女神、すなわちデンダーラを妻に娶った。彼女の笑顔は、イェルムに不思議な感情を起こさせたものだった。

 ある日、イェルムが家来に歌を歌わせていたときのこと。デンダーラは言った。「これは素晴らしいものですわ。でもいつも同じ歌ばかり。他の歌い方をさせられないでしょうか?」

 「ロウドリルのようにしろと言うのか?」とイェルムは驚いて聞き返した。

 「いいえ、もちろん違います」 デンダーラはイェルムの言葉に顔を赤らめながら応えた。「でも、他のやり方はあるはずです」

 そうして、ダーゼイター、イェルム、ロウドリルと、デンダーラ、オリア、そして“他なる女神”が集まって新しい歌を歌うものを創り出すことにしたのだ。

 まず、デンダーラが岩を骨に、土を肉にして「形」を作った。次にロウドリルが「熱」を与えて命をやどらせた。それからオリアが「獣」の本能を与え、遠くからダーゼイターが「鳥」の力(知性)を与えた。〓他なる女神〓はこっそりと「影」を与えた。最後にイェルムが「炎」を与え、こうして「人間」が誕生した。

 人間たちは新しい歌と踊りを作りだし、自分たちを作りだした神々を崇めた。歌を聞いて、デンダーラは微笑んだ。イェルムも大いに喜んだという。

 後に繁殖の女神ユーレーリアが力を貸して、人間の子孫は地上世界に広がっていった。それでも「黄金の時代」には土地もたくさんあり、神々のお力もあったので、人々は苦労もせずに生きられて、することといったら神々に祈るだけだったということだ。


■ダラ・ハッパ帝国
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 ある日、地の底からネステントスと呼ばれる青い大蛇が現れた。これにはロウドリルをはじめとした神々が戦いを挑んだが、こてんぱんにやられてしまった。イェルムは自分の純粋性を汚されるのを恐れ、地上から中空へ昇ってしまった。初めて地上の玉座は空となり、人々は恐怖に泣き叫んだ。我らを支配する皇帝がいなくなってしまった、一体どうしたらいいのだろう!

 そこに現れたのはイェルムとデンダーラの息子、ムルハルツァームだった。彼はネステントスとがっぷり四つに組み、ロウドリルとその10人の息子に「最初の潅漑」をおこなわせた。こうしてドラゴンはなだめられ、オスリラとなった。

 イェルムはお喜びになり、息子ムルハルツァームに人類の皇帝となるための「十の試練」の儀式を受けるように命じた。ムルハルツァームは試練をやり遂げて、「最初のダラ・ハッパ皇帝」となった。天空に輝くイェルムの下、帝国は世界を覆い、帝国の首都ライバンスは大いに栄えたという。




■イェルムの死
 誰も気づいていなかったが、デンダーラが新しい歌を望んだときから、僅かなゆがみが世界に生じ始めていた。やがて嵐の神ウーマスが現れ、世界に混乱の種をまき散らし始めた。嵐の神々はあらゆる乱暴狼藉を働いた。例えば、ウーマスは北の天柱を砕き、天蓋を地面にめり込ませてしまった。これが完璧であった天空が、今あるように回転はじめた最初だという。ウーマスは他にもたくさんの無法をおこなったが、最後にはイェルムの息子、“破壊するもの”シャーガシュに殺された。だがこれで災難は終わらなかった。

 嵐の神々の中でも、ウーマスの末子オーランスは父と良く似た乱暴者であった。彼は皇帝づきの侍女アーナールダに懸想し、イェルムに競技を挑むという大それたことをしでかした。そしてことごとく皇帝に破れたオーランスは、「反逆の神々」を集めて卑劣極まりない計画を実行に移した。オーランスたちはダラ・ハッパ帝国の王宮に忍び込むと、仲間の手を借りて皇帝ムルハルツァームを斬り殺したのだ。

 最愛の息子の死を眼にしたイェルムは、絶望のあまり天空でバラバラに砕けてしまった。世界は暗くなり、反逆の神々は自分たちのしでかしたことの恐ろしさに気づいて逃げ出していった。こうして「黄金の時代」は幕を下ろした。


■「大洪水」と「氷河」の到来
 「人類の皇帝」であるムルハルツァームがオーランスに殺されたため、人間は死ななくてはならなくなってしまった。今あるように、生きるために苦しまねばらななくなったのだ。暗黒と悪徳が世界を覆った。グローランサは狂い始めた。

 やがて“嵐”がやって来た。──「大洪水」だ。大洪水は何年も続き、大地はみな沈んでしまった。だがムルハルツァーム帝の孫、アナクシアルは「箱舟」を作り、心正しい人々だけを救うことができた。皇帝は箱舟の漂着した場所に「神の舟」(★ユスッパ)の都を築いた。アナクシアル帝はダラ・ハッパ帝国を再建された。

 帝国は他の地に比べれば生きていくのもまだましな所だった。それは、イェルムの砕けたかけらの一つが、“正義の神”アンティリウスとなって帝国を守護していたからだ。だが世界が再び悪徳に染まるにつれ、アンティリウスの力は弱まっていった。

 北からはヴァリンドの「氷河」が押し寄せてきた。時の皇帝マナルレイヴァスは、ダラ・ハッパ帝国を黄金のドームで覆うことにし、その中に人々を避難させた。帝国は長く外界の氷河と暗黒から守られていた。神々もドームの中に住んだため、多くの神々の子孫が生まれた。宮殿に住む貴族たちは皆、天空の神々の子孫なのだと言っておるだろう。

 さて、トロウルとアンデッドの攻撃によって、さしものドームも持たないかと思われる時がやってきた。アンティリウス神は、皇帝ヴァニオラメットと共に「黄金の丘」へクエストに旅立った。だが、なんということか! そこで皇帝は殺され、アンティリウスもゾラーク・ゾラーンに傷つけられ、地上から消え去ってしまったのだ。ドームは砕け、暗黒と冷気が帝国を席巻した。皇帝マニマトに率いられた人々は丘陵地帯へ逃げ、トライポリスは無人となってうち捨てられた。

 惑星は全て墜ち、空には星のひとつもなかった。“虚ろの皇帝”カツクルトゥムが玉座に上り、堕落した人々を支配した。世界はひび割れ、砕けていた。
 これが「大暗黒」だ。


■イェルムの「啓発」
 イェルムは命を失い闇に落とされてなお、「宇宙の法」の真実を握りしめておった。地上世界で死んだ神々もやがて地獄にあるイェルムの「静寂の宮廷」に集まってきた。

 イェルムはそのとき、“一なるもの”でありながら、同時に“多なるもの”であった。初めて、イェルムは自身の“他なるもの”、「光の影」を知った。不可能が成し遂げられ、イェルムは啓発された。「内なる光」は再び輝きはじめた。

 その光はかつてイェルムを殺したオーランスを地獄の底へ呼び寄せた。敵は謝罪し、自身を犠牲にした。これが神の再生の糧となった。

 イェルムはまず邪悪を清めるために“浄化するもの”シャーガシュを地上世界へ送った。シャーガシュはカツクルトゥムと戦いこれをバラバラに引き裂くと、グローランサの各地に埋めた。次いでシャーガシュは天空に昇り、魔や邪悪な神々を次々と殺していった。

 次に、イェルムはカルグザントを地上へ送った。カルグザントは遊牧民の神であり、一つ所に留まることを良しとしなかったので、グローランサを巡り、砕けた世界をひとつところに集めるように命じたのだ。

 グローランサが再生していくと、イェルムはさらに多くの神々を上方世界へ送った。空に星々が戻ってきた。人間たちは星から送られてきた半神たちによって多くの助けを得た。

 最後に、イェルムは自分のエッセンスであるアンティリウスを地上に送った。1万年以上もの間見ることのできなかった太陽が、初めて地上に昇った瞬間だった。これが「曙」だ。神々は去り、神話時代は終わり、歴史が始まった。

曙の時代──第一期:帝国の再興

遊牧民の支配
 大暗黒の末期、馬神カルグザントに従う“戦車帝”ジェナロングは、ダラ・ハッパ帝国を再建して皇帝となった。だがその子孫たちはその神と同様に堕落し、「曙」が訪れた時には、ペローリア全土に邪悪な皇帝による圧制がひかれていた。

 英雄アヴィヴァスは正義の神アンティリウスの「化身」であった。邪悪な皇帝たちは彼を捉えて太陽神アンティリウスの力を得ようとした。アヴィヴァスはしかし、《太陽槍》の力を使って“邪悪の子”フラダッバ、“人食帝”ダルダグスなどの邪悪な皇帝を逆にうち倒したのだ。彼は邪悪な皇帝に利用されるのを嫌い、世から身を隠した。

 “真帝”コルダフはそのアヴィヴァスの孫じゃ。221年、コルダフはダラ・ハッパ帝位に就き、新王朝を開いた。彼は十の皇子の手から十の神器(レガリア)を集め、皇帝の都ライバンスで、ユスッパの司祭の手により、アルコスの兵士に護られ、「十の試練」を通過して皇帝となった。この時、真の太陽であるイェルムが天に昇った。コルダフ帝は、南から来たドラゴニュート、モスタリ、アルドリアミなどの怪物と反逆の神々の信徒から成る「世界友邦評議会」と、邪悪な騎馬遊牧民とを戦わせ、お互いの力を削いだ(*)。まさしくいと賢き皇帝よ! こうして太陽の帝国は再興された。


(*)……戦わせ、お互いの力を削いだ:「アージェンティウム・スリーリーの戦い」(230年)。第一評議会と騎馬遊牧民の間の戦い。


オセンタルカの創造
 遊牧民どもがペローリアからペントへ追放され、真の皇帝が「イェルムのピラー」の玉座に昇った221年に、アンティリウスに代わってイェルムが初めて地上に昇った。だが、このイェルムも真なるイェルムの6つの部分のうち5つまでしか持たない不完全なイェルムじゃった。このイェルムを完全なものにするプロジェクト、それが「ナイサロールの創造」だったのじゃ。ダラ・ハッパの最盛期の領土を回復した“大帝”コルツァネルムは、第二評議会と協力して準備を進めた。

 375年、長い儀式の後、コルツァネルム大帝の切なる祈りはついにイェルムへ届いた。黄金の時代の頃の如く、太陽は天空で停止し、地上の人々へ祝福を送った。そして地上世界では、「多なるものの中の一なるもの」、ナイサロールが誕生したのだ。

 ナイサロールの力を得たイェルムは“完全なるもの”となった。ナイサロールの教えによって、イェルムの叡智(啓発)を定命の者さえ得ることができるようになったのじゃ。ナイサロールの光の帝国とダラ・ハッパのコルツァネルム大帝の治世の時代、地上には再び黄金時代が訪れたかのようであったという。


グバージ戦争
 ダラ・ハッパ帝国は、次のラダイダフ帝の下でも繁栄を続けた。しかし、西方では“裏切者”グバージがナイサロールに対して戦争を始めていた。西方は徐々にグバージの手に落ちていった。グバージは一度「カートリン城の戦い」でナイサロールに敗れ去ったが、オーランス人の“裸足の”ハルマストにより復活し、今度は邪悪な暗黒のトロウルたちの力を借りて光の帝国の首府ドラストールへと攻め入ってきた。こうして、この平和の時代は“裏切り者”グバージによるナイサロールの破壊とともに失われた。ナイサロールを少しでも思い出させるものは徹底的に破壊され、残ったのは淡い喪失感のみであった。

 再びイェルムが“完全なるもの”になるには、赤の女神の復活(ナイサロールの解放)まで待たねばならなかった。

帝国の時代──第二期:ワームの友邦帝国とカルマニア帝国

スポルの薄闇の帝国
 コルダフ王朝最後の皇帝アニレストゥはオーランス人によって捕らわれ、異国で客死した。ダラ・ハッパはしばし、オーランス人や騎獣遊牧民に支配された。だが484年、オーランス人たちは英雄オルダネストゥに追放された。後にオルダネストゥの子が皇帝位に就き、ダラ・ハッパ帝国を再興した。しかしこの王朝の中頃より、西方の「スポルの薄闇の帝国」の暗黒の力が帝国を冒し始めた。やがて帝国はスポル帝国の侵攻を受け、皇帝は光の神々の信仰を捨て、スポルの暗黒の神々を信仰すると宣言するに至った。この偽帝は「十の試練」の中で英雄によって殺され、王朝は滅んだ。


ワームの友邦帝国と黄金のドラゴン
 偽帝を殺し「十の試練」を完遂したデネシオド帝が新王朝を開いた。ほぼ時を同じくして、スポル帝国はペランダ地方の民の反乱の炎の中で瓦解し、西方出身の傭兵の子カルマノスが「カルマニア護領」(Carmania Protectorate)を開いた。カルマノスの子の代には、彼らはペランダ人を支配してカルマニア王国を名乗るようになった。

 デネシオド王朝は“征服帝”エルメキシドロスの時代に古代の版図をかなり回復したが、この帝の時代には南方から広まってきていたドラゴンの宣教師を認めるという過ちも犯した。この「黄金のドラゴン」カルトは民衆の間で次第に力を増し、光の神々の信仰を圧迫するまでになった。やがてドラゴンに反抗の狼煙を上げた皇帝ディスマンスヤールが敗れると、帝国は「太陽ドラゴン」に支配される事となった。

 ドラゴンの皇帝の支配は、30余年に渡って続いた。


平和の三世代
 ディスマンスヤールの子ウルヴァニアールは、ドラゴンとの戦いに敗れ乞食にまで身を落としていた。その息子カルヴァニアールは父を助け、ドラゴンと戦い、これに勝利した。だがウルヴァニアールは戦いの中で命を落としていた。910年、カルヴァニアールは帝位に就き、新王朝を開いた。

 カルヴァニアールはカルマニアの力を借り、EWFを駆逐した。その息子サレネシュはカルマニアの王女と結婚し、その息子たちはダラ・ハッパ皇帝、カルマニアの王、セアードの高王となった。三国は連帯し、邪悪なドラゴンとEWFと戦った。カルマニア=ダラ・ハッパ=セアード連合帝国は、約100年に渡る平和を謳歌した。これを「平和の三世代」と呼ぶ。


戦の三世代とドラゴンキル戦争
 1042年、EWFはドラゴニュートの裏切りにあって崩壊した。共通の敵を失ったカルマニアとダラ・ハッパは、次第に対立していくことになる。この時代の戦争は、アルコスとカルマニアの対立に題を取った叙事詩「アルコシアド」に詠われておる。カルマニアとダラ・ハッパ帝国の間で戦争の続いたこの時代を「戦の三世代」と呼ぶ。

 そんな中、クマルドロス帝はカルマニアの王、“大王”ハランと和を結び、「英雄の召集」に応えた皇帝だ。皇帝と王は協力し、再び古の共通の敵、ドラゴンと戦うことにしたのだ。クマルドロス帝はカリスマ的な皇帝であり、ペローリア全土の英雄たちをその「真性黄金軍団」の旗の下に集わせた。1年の後、彼らは南方ドラゴン・パスへ行軍し、ドラゴンたちと戦う事となった。

 しかし、なんということか! ドラゴンどもは彼らを待ち受け、顎の中へと引き入れ、英雄たちを貪り喰ってしまったのだ! これは「大災厄」あるいは「ドラゴンキル」と呼ばれている。この災厄によって、精鋭の兵士のほとんどは失われてしまった。10人に1人の兵士が戻ってきた軍団は幸運な方だったという有様だったのだ。新たに立ったアレンヴァス帝は軍制を改革し、初めてポーラリスの将軍職を置いた。


カルマニア帝国
 後継者を失ったのはカルマニアも同じであった。カルマニアは、以前のスポル帝国と同じく闇の力に墜ちていった。カルマニアの王位を簒奪した雄牛王朝の王カルタヴァールの大征服行(カルマニアン・マーチ)により、ダールセンは陥ち、ユスッパも包囲された。皇帝ヴィンヤルトゥは都市の民に慈悲を乞うため、カルタヴァールに降伏し、古の慣習と民を守るという条件で帝国を彼に差し出した。

 だが、カルタヴァールは、まず老人に自殺するよう命じた。老人たちはその言葉通りに自殺した。するとカルタヴァールは呵々大笑し、では、次に男たちがお互いに交わるがよい、と命じた。誇り高いダラ・ハッパ人にはそのような行為はできまいと考えていたのじゃ。だが王の驚いたことに、彼らはそうした。この大いなる犠牲によって、他の都市では1万の民の命が奪われていたのに対し、ユスッパでは皇帝と数百人の官僚と商人が殺されただけで済んだのだ。こうしてカルヴァニアール王朝は滅んだ。

 カルマニア王朝は光の神々を貶め、その寺院の近くに彼らの闇の寺院を建設していった。圧政が地を覆い、イェルムの信仰は抑圧された。

現代──第三期:ルナー帝国

女神とカルマニア帝国
 コスターディの貴族であったイェルムガーサは、邪悪なるカルマニア帝国に対して反乱を起こした。カルマニア帝国は反乱鎮圧のためにプルダシャーク将軍を送った。イェルムガーサは賢くも、新たにリンリディ地方に新たに興った「原聖地」へ、生ける女神の助力を乞い赴いた。

 赤の女神は共通の敵にお互いにあたることを約束した。また、リンリディの太陽信者も彼の下に加わった。イェルムガーサはまた、女神の力に霊感を受け、イェルムの「化身」となるべくヒーロークエストを始めた。

 カルマニア帝国の傀儡皇帝スペンガーサは、イェルムガーサが真の皇帝に近づいているのを感じ、恐怖した。皇帝は玉座を捨て、裸で逃げ出していった。

 1235年、イェルムガーサはアルコスとユスッパの司祭の助けを得、また赤の女神から知識を得て、ライバンスへ向かった。イェルムガーサの儀式が完了するとライバンスの門はカルマニア人に対して閉じられた。イェルムガーサは「皇帝の召集」の儀式を行った。多くの精霊は途中で殺され、また召集の相手が滅んでいることもあった。だが幾ばくかの忠臣は召集に応え、新たな皇帝を助けるためにライバンスへ集った。カルマニア軍は抵抗したが、光に従おうとする人々の流れを止めることは不可能であった。こうしてライバンスは解放された。

 イェルムガーサ帝と赤の女神は、共にカルマニア帝国と戦い続けた。だが戦いの中で、彼の三人の息子は命を落とし、二人の娘も若くして亡くなった。

 1247年、月が天に昇った。同じ年に、皇帝は「赤の女王国」の指導者、ターケンエギを後継者に指名した。彼は赤の皇帝に共に玉座に座り、皇帝の秘密を学ぶようにと命じたのである。若者は辞退したが、結局これを受け入れた。1247年から1250年は、黄金の皇帝と赤の皇帝の支配した「双帝の時代」と呼ばれる。

 イェルムガーサ帝は1250年に息を引き取った。彼の体は火をかけずとも自然に燃え上がり、フェニックスとなって太陽へと去っていったという。

 こうして新たな皇帝、第77代ダラ・ハッパ帝国皇帝、ダーゼイターの曾々孫、月の息子、天国への架け橋、魂の自由の護り手、赤の皇帝ターケンエギが帝位に就いた。以来400年間、帝国はこの神子によって統治され続けているのだよ。

ミリンズクロスの赤の女神の入信者が語ったこと

 赤の女神は神話の中で7つの姿を取っています。赤の女神の神話はまた、“創造主の仮面”、“変化させる者”、“周期の女神”セデーニアの物語でもあります。赤の女神はセデーニァの秘密を人々にお教えになられました。そのために、これは彼女へと近づくためのヒーロークエストの物語でもあります。


ヴェリスルーザ──下弦半月の女神
赤い月の女神、彼女の教えは「無垢」
 黄金の時代、女神はイェルムの娘として北の空にあった「白き惑星」であられました。女神は見知らぬ天空を奔放に散策されておりましたが、あるとき、天空に現れたウーマスに興味を持った女神は、その定かならざる軌道の後をついてまわりました。そして女神は下方世界へ落ち、そこで“性”と“死”を知り、その色を白から赤に変えました。彼女は満ち足りた状態から何かを失い、半分欠けてしまったのです。


レシーラ──下弦三日月の女神
青い月の女神、彼女の教えは「恭順」
 イェルムが殺され暗黒が地を覆ったころ、女神はメルニッタの都の子供たちを見守るために地上近くに降りて来られました。女神は惜しみなく彼女自身について教え、その身を賭して彼らを護りました。

 女神はダラ・ハッパ皇帝ルカリウスと結婚しました。やがて仲違いから、女神は皇帝に射殺されて地上へと落ち、死体のようにその色を赤から青に変えました。しかし、女神はメルニッタ市の人々の間で“青の女王”セルーリアとして生き続けました。彼女は何度も何度も別の女性として蘇ったため、皇帝は彼女にその“螺旋の道”の秘法を教えるよう迫り、幾たびも彼女を殺しました。やがてあまりに多くの人々が殺されたため、女神は皇帝に従い、その力を「メルニッタの冠」という宝冠にして皇帝に引き渡しました。


ゲラ──新月の女神
黒い月の女神、彼女の教えは「犠牲」
 彼女はルカリウスに「鏡」が「光」に仕えるように仕えました。やがて皇帝は没し、子供たちも死に、友人たちも死に、彼女は“悲嘆”というものを知りました。「大暗黒」が訪れ、彼女は住む場所を失い、その力も失いました。彼女は世界を彷徨し、やがて死者の地にさまよう魔物でしかなくなってしまいました。彼女は世界でもっとも暗い、“地獄”へ辿り着いたのです。彼女は何度も何度も切り刻まれ、死者たちの中でただひとり生ある者として苦しみつづけました。


ラーショラナ──暮月の女神
黒い月の女神、彼女の教えは「啓発」
 あるとき、ゲラはなぜ貴女はそんなに苦しんでいるのか、と尋ねられました。彼女は応えました。「生きることは苦しみですから」。そしてその者はこう応えました。「しかし、苦しむことは生ではありません」

 ゲラはこの言葉を聞き、“啓発”されました。啓発によって彼女は自分が“月の女神”にして“変化させる者”、セデーニァであることを悟ったのです。生命の炎が新たに灯され、彼女の苦しみは終わりました。


オロジェリア──上弦三日月の女神
青い月の女神、彼女の教えは「再生」
 彼女は獲物であることから、女狩人として生まれ変わりました。曙の訪れる前の「星の時代」、女神は星を導き、荒れ狂う天空の生物たち、特にその長である“星の熊”オーランスを手なずけ、失われた彼女のかけらを狩り、それを再誕に備えて世界の各地に置いたのでした。


ナーザ──上弦半月の女神
赤い月の女神、彼女の教えは「均整」
 「大いなる盟約」は女神を受け入れませんでした。ですが、女神はグローランサの中で巧妙に様々な準備を整えました。例えば、彼女は“解放者”カルマノスとして現れ、カルマニア人に二元論的信仰を与えました。これは後にルナーの顕現を完成させる二元的な最後の戦いを起こすことになります。そして0/0、トーランの都に“均衡の女神”ナーザとして女神は再誕されました。


ゼイテネラ──満月の女神
白い月の女神、彼女の教えは「完全」
 女神は若い女性の肉体をもって生まれ、赤の女神(ルフェルザ)となり、そのナイサロールのかけらを含め、失われた七つのかけらをヒーロークエストによって集めました。女神は悠久の昔に彼女を生んだ天空へと戻るため、その天体を天に昇らせました。女神の霊的存在はそこから天空へと戻り、宇宙的な自我と再び一つになりました。我々はこの天体へ向けて祈りを捧げるのです。

ダラ・ハッパ皇帝の系譜

イェルム王朝
1.イェルム
2.ムルハルツァーム
3.コルヴェントス


オヴォスト王朝
4.オヴォスト
5.オロゴロス
6.オラヴィノス


アナクシアル王朝
7.アナクシアル、舟帝
8.ルカリウス、立法帝
9.ウルヴァイリヌス、征服帝
10.ケスティノロス、愛鳥帝
11.マナルレイヴァス、天蓋帝
12.ヴォニオラメト
13.マニマト、末帝


*.カツクルトゥム、虚ろの皇帝


ジェナロング王朝(-200?〜221)
14.ジェナロング、戦車帝
15.ゲルスコガール(-7〜18)
16.ヴラノストゥム(35〜72)
17.フラダッバ(96〜111)
18.ダルダグス、食人帝(112〜121)
19.ケルネビィ(125〜136)
20.ダグネリ(137〜145)
21.ケスティネンドス(155〜172)
22.イラダルガ(175〜185)
23.ヴィラマクラッダ(186〜193)
24.エウシブス(194〜215)
25.ハルカツテム(216〜221)


コルダフ王朝(221〜431)
26.コルダフ、真帝(221〜245)
27.アニメーシャ(248〜268)
28.アニルダフ、清貧帝(279〜306)
29.エライダフ、征服帝(307〜332)
30.マーツァネルム(332〜345)
31.エルツァネルム(346〜367)
32.コルツァネルム、大帝(368〜405)
33.ラダイダフ(406〜422)
34.アニレストゥ、末帝(423〜431)


エルツァネストゥ王朝(484〜677)
35.エルツァネストゥ(484〜492)
36.アニリネルム(493〜514)
37.ライブメーシャ(515〜522)
38.エルムハールスニック(523〜528)
39.ソーセニック(539〜561)
40.ヘレムシャール(562〜577)
41.ヴォランデフ(578〜613)
42.フェナルデフ(614〜621)
43.アスヴェクホーデフ(621〜643)
44.デシクセルム(643〜658)
45.デシカニール(659〜677)


デネシオド王朝(690〜878)
46.デネシオド(690〜718)
47.エルメシオド(719〜740)
48.ディスメシオド(741〜760)
49.エルメキシドロス、征服帝(761〜780)
50.ディスメキシドロス(781〜800)
51.カルメキシドロス(801〜820)
52.エルマトリアン(821〜835)
53.ディスマトリアン(836〜850)
54.ユリカレルム、正帝(851〜866)
55.ディスマンスヤール(867〜878)


*.太陽ドラゴン


カルヴァニアール王朝(910〜1173)
56.カルヴァニアール(910〜945)
57.セレネシュ(946〜960)
58.ヘレデシュ(960〜975)
59.カルスデヴァン(975〜995)
60.カルスデヴァサス(995〜1038)
61.ケヴェトデシュ(1038〜1065)
62.ケヴェトデヴスス(1065〜1077)
63.クマルデシュ(1077〜1080)
64.コルヴィラマーカ(1089〜1096)
65.クマルストゥ(1096〜1110)
66.クマルドロス(1110〜1120)
67.アレンヴァス(1125〜1153)
68.コルケスティヌス(1153〜1156)
69.クマルドロニ(1156〜1161)
70.ケヴェトドロニ(1161〜1168)
71.ヴィンヤルトゥ、勇壮帝(1168〜1173)


カルマニア王朝(雄牛王朝)(1185〜1220)
72.バイソシャーン(1185〜1207)
73.エンダルカス(1205〜1207)
74.バイソダカール(1205〜1220)


太陽王
75.スペンガーサ(1220〜1235)
76.イェルムガーサ(1235〜1250)


赤の皇帝
77.タケネギ(1247〜現在)