ルーンクエスト情報局

新ルーンクエストの情報です。

地誌:バラザール~グリフィンの荒野~

バラザール地方

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ルーンクエストの設定資料集「ジェナーテラブック」では、バラザール地方は「空白地帯」(ケイオシアムの設定がされない地方)とされています。


しかしながら、それ以前の2版では詳細な設定が存在しました。キャンペーンモジュール「Griffin Mountain」(1981, Chaosium)です。空白地帯とされながらもこの本で行われた設定は放棄されたわけではないようで、たとえば「古の秘密」ではバラザールについて言及がありますし、未訳ですが「Drastor : Land of Doom」掲載のテルモーのカルトでは「バラザールの犬の民」について触れられています。


ではなぜ「ジェナーテラブック」でバラザールが空白地帯とされているのでしょうか? これは私の推察ですが、「ゲートウェイ」(RQ用汎用セッティング)として「グリフィン・アイランド」が出版されたからではないでしょうか。このモジュールは「Griffin Mountain」を元にしているのですが、これを出す上で設定のバッティングがあるとまずい、とのアヴァロンヒル/ケイオシアムが判断したのでしょう。このへんの経緯については「グリフィン・アイランド」のシナリオブック、「はじめに」の項でも触れられています。


しかしながら、Guide to Glorantha にバラザールの項が設けられているのをみてもわかるように、新ルーンクエストではバラザールを冒険の舞台として再び扱うことにしたようです。


ここでは、「グリフィン・アイランド」の設定とどこがどう違うのかを比較しつつバラザールを紹介していきたいと思います。



バラザールはどこにあるのか?

ルナー帝国のターシュ・ホーレイの東方、エルフ海と東岩の森山脈に挟まれた地方がバラザールと古き荒野です。北にはガースティング(空白地帯)、その先には赤の平原があります。東と南は岩の森山脈で閉ざされており、西はルナー帝国の属領地地方が広がっています。



ルナー帝国の大きさと、バラザール地方の大きさを比べてみると、バラザールと呼ばれている地方が非常に広い地域をさしていることがわかります(サーター王国と比べても、数倍の大きさがあるようです)。ここに、1万人弱の人間しか住んでいない(サーターは18万人)ことから、人口密度はかなり低いことが分かります。ルナー帝国の至近にありながら、帝国が領土拡大にのりださなかったのもこのためでしょう。

バラザールの3つの砦のあいだも、かなり距離があるように思えます。

バラザール東部

エルフ海(Elf Sea)

中原にある大きな淡水湖。太古には海エルフが棲み、エルフたちと交易し、また巨大な樹木船が行き来していたというが、現在では危険な生物がすみほとんど往来できなくなっている。

戦士の港(Soldier Ferry)

イムサー王国によりはるか昔に築かれた砦。西部のバラザール氏族の落ち合い場所としても使われている。

楡森(Elm Wood)

犬の丘とエルフ海のあいだに広がる森。採集のためのよい場所だが放牧には向かない。楡森と呼ばれているが、楡(にれ)の木はあまりみかけない。

モランデ川(Morande River)

エルフ海にそそぐ川のひとつ。怪物が多く棲み、雪解けの海の季には洪水をおこして周辺に危害をくわえる。4年に1度、エルフ海の鮭が川を遡ってうめつくす。

犬の丘(Dog Hills)

荒涼とした嶮しい丘のつらなり。エルコイ砦に属する氏族が領有を主張している。

西の原(West Plain)

バラザール西部の大草原。草の原にところどころ木々が生えている。

エルコイ砦(Elkoi)

バラザールの息子の一人エルコイにより、岩の森の巨人を使役して築かれた砦。60年ほど前にホーレイの一部隊により征服された。

岬の丘(Spit Hills)

トリルス砦のある丘陵。楡森と樫森の境となっている。

トリルス砦(Trilus)

バラザールの息子の一人トリルスが受け継いだ砦。現在は“怪物殺し”ヤラリング王が支配している。

■バラザールの神話と歴史

神話時代


“冷たき風”が“太陽”を殺し、暗黒の時代が訪れた。飢えた人々は“炉辺の母”にすがった。“捨子”が現れて人々に狩猟の技を教えた。“炉辺の母”と“捨子”の息子ヴォタンクは、10人の息子にそれぞれ氏族をつくらせた。


北方より氷河が来た。ヴォタンク族、ドラゴニュート、エルフ海のエルフ、トロウル丘陵のトロウル、グレートウェイのドワーフ、岩の森の巨人、“金輪の踊り手”(Gold Wheel Dancers)は協力して「全種族評議会」(Council of All Races)をつくり、氷と戦った。彼らはそれぞれ「我が戦い、皆が勝った」戦いを戦い、混沌に勝利した。

第一期


ST.78、バラザールの全種族評議会は「世界友邦評議会」に加わった。グバージ戦争ではグバージと敵対するトロウル、壊れた評議会に協力するエルフの対立から古の種族の間の争いが再燃した。アーカットがグバージを倒した後もこの争いは終わることはなかった。

第二期


トロウル、エルフ、ドワーフの古の種族の戦いは、結局全ての種族の力を弱める結果となった。720年、古き荒野はワームの友邦帝国(EWF)の版図に組み込まれた。EWFはやがてドラゴニュートの裏切りにより崩壊した(1042年)。

1082 年、バラザールという英雄が西方より現れ、サルカントゥス(イェルマリオ)の信仰をヴォタンク族に広めた。彼は5年のうちに全てのヴォタンク族の指導者となり、その2年後には王に帯冠した。それまで「ヴォタンクの地」と呼ばれていたこの地方は、その後「バラザール」と呼ばれるようになった。1120年、バラザールは「ドラゴン・キル戦争」により世継ぎを指名しないまま世を去った。

第三期


バラザールはエルコイ、トルリス、ディケーネという3人の子を残した。彼らはそれぞれ砦を築き、その名を冠する部族を創立した。いくつか争いはあったが、総じて平和な時代が続いた。しかし1564年、度重なるターシュの略奪に業を煮やしたルナー帝国の小部隊がエルコイ砦を急襲し、その支配者を一掃して傀儡王朝を建てた。30年ほど前には、トルリスとディケーネの間で「勝者なき戦い」という戦いが行われた。ターシュ・サーターの崩壊後は、この地方へ逃げ込むオーランス信者も増え、不穏な空気がバラザールを覆っている。

■バラザールの住人


バラザールの住人は祖霊ヴォタンクを信仰しています。また“炉辺の母”“捨子”の信仰も一般的に見られます。バラザールは統一の力としてサルカントゥス(イェルマリオ)のカルトを広めましたが、これはほとんど成功しませんでした。バラザール人は狩猟・採集で生計を立てています。砦の住人はバラザールの教えた野穀の栽培や豚の飼育などを行っています。


バラザールの人々の生活については「グリフィン・アイランド」;「プレイヤーブック」、「狩猟民」と「ヴォタンクの狩人たち」を見てください。


主に信仰されているのは次の神々です。

  • ヴォタンク(Votank): 聖なる祖先、法のつくり手、男たちの精霊
  • 炉辺の母(Hearthmother): 採集と女たちの精霊
  • 捨子(Foundchild): 狩人の精霊
  • サルカントゥス(Thalkantus): 丘陵の光の神、戦士と支配者の神


以下は少数の人々に信仰されている神々です。

  • 友なる犬(Brother Dog): 捨子の友
  • バラザール(Balazar): 古の王、砦の支配者
  • 七母神(Seven Mothers): エルコイ砦のルナー兵たちに信仰される。
  • 光持ち帰りし者たち(Lightbringers): 外部から持ち込まれ、最近はトルリス砦で信者が増えている。

■バラザールへ


バラザールに入るには、西のルナー帝国領からが最も一般的ですが、次のような道もあります。

  • 「ゴン・オルタの峠」:プラックスから巨人の峠を越えて古き荒野へ出る道。峠がどこにあるかはほんの一握りの人間しか知らない。「ジェナーテラブック」77ページも参照。
  • 「ワームズハイ・パス」:ダゴーリ・インカース/忌わしの森からブラックオルム山、東岩の森山脈を越える峠。危険。


ではバラザールに来る理由にはどのようなものがあるのでしょうか……?

  • 「風の剣」: 1000年以上前のオーランスの英雄がエルフと混沌と戦う際に使ったと言われる剣。伝説では混沌を検知し、混沌を破壊するために作られたといわれる。バラザールのいずこかにあるとの噂。
  • 「鉄の王冠」: オーランスの英雄“竜殺し”アラコリング(“神々の王”下位カルトを開いた)が所持していた王冠。アラコリングはEWF末期にバラザールのエルフによって殺されている。《信徒への命令》を無制限で使用できる。1万ルナー以上の価値がある。
  • 「ハースピアサー」: 投げても手元に戻ってくる槍。ドラゴンキル戦争で失われていたが、吟遊詩人はバラザールの荒野の魔術師がこれを発見したと伝えている。
  • 「巨大な鷹」: バラザールで新しく発見された種族。ヴロク鷹に非常に良く似ているという。軍事利用の可能性も含め、知識の寺院が調査を行いたがっている。
  • 「巨人の城」: 巨人の城があり、多くの魔法の宝を護っているという。また巨人のうち一人は魔法の品をあまり価値がないような品と取引してくれるともいう。彼は魔漿石も売ってくれるだろう。
  • 「混沌に死を」: バラザールの「呪われた河」という場所から混沌が沸き出しているという。
  • 「ヴィーヴァモート城」: バラザールには、かつてヴィーヴァモートその人が居を構えた太古の城があるという噂がある。ヴィーヴァモートは「時」の始まる前に破壊されたが、その従者が残ってその呪われた宝を1500年以上も守り続けているのだという。
  • 「逃亡」: とある理由からPCは文明化された地方から荒野へ逃げ込まなくてはならなくなった…

住人


おおきくわけて、原住民異邦人がいます。


原住民は、ヴォタンク人とバラザール人です。これは起源は同じ人たちで、イェルマリオを受け入れたか受け入れないかで区別されます。


ヴォタンク人は、祖霊崇拝の連中で、祖霊崇拝(ヴォタンク)と、かまどの火の精霊(炉辺の火)、犬の精霊(兄弟なる犬)、狩人の精霊(捨子)を信仰してます。コンセプトは新石器時代人を遊びましょう」です。

「兄弟なる犬」と「捨子」の精霊は、ヴォタンク人だけでなくプラックスでも信仰されているので、もともとはなんかのつながりがあったのかもしれない。なお、ペローリア南部地方では犬が大人気で、バラザール以外でもホーレイからシリーラにかけては、犬の神で死神のジャジャガーパだとか、同じく犬の神ラウドリルとかが広く信仰されています。神話時代に犬神の根拠地があったんだろうか。それで猫好きなドラゴン・パスのヒョルト人とは気が合わないらしいです。

ヴォタンクの地は、ダラ・ハッパでは古代から「奴隷の供給源」として知られており、ダラ・ハッパ人の神話ではヴォタンクが獅子神デュルバダスの息子にされており、奴隷になるのに合意しているとかひどいことをいわれてます。(「デュルバダスは……イェルムにその首を落とされた。それを返してもらう代わりに、デュルバダスは息子をイェルムの奴隷として差し出すのに同意したのであった」GRoY、神々の碑第3列より) 現地人はそんな神話しらねえよ!という感じらしい。


バラザール人は、ダラ・ハッパ(ヴァンチ人ではないかとも言われている)の英雄バラザールがやってきたときに、サルカントゥス・イェルマリオを受け入れた人たちです。バラザールは基本的に文明人だったので、ヴォタンク人になんとか農耕を定着させようとしました。豚の女神エントラをひろめ、岩の森の巨人たちをだまくらかして石造りの砦を築き、「こりゃあこいつについていくといいことがあるぞ!」とヴォタンク人の族長たちに信じさせて、やってきて5年でヴォタンク族10氏族の「王」に拝戴されました。


しかしバラザールは、ドラゴン・パスのドラゴニュートを成敗しようという「真なる黄金の群れ」の召還に応えたため、志半ばで「ドラゴンキル戦争」でドラゴンに喰われてしまいました。
……ちなみに、ペローリア南部各地にあったイェルマリオのカルトは、「黄金の群れ」に嬉々として加わったために、ほぼ壊滅したと思われます。バラザールには、ゴーストが1体のみたどりついて大災厄について伝えた、といわれております。


バラザールには2人の息子(エルコイとトリルス)と1人の娘(ディケーネ)がおり、彼らが3つの砦を分割して受けつぎました。1250年頃にはだまされていたことに気付いた巨人がディケーネ砦に来襲し、ディケーネ砦を廃墟にしてしまいます。これは40年前に英雄スキルフィル王に再建されるまでつづきました。エルコイ砦は60年ほど前に、ルナー帝国軍(ホーレイ軍)に占領され、現在では傀儡の王と長官のハルシオン・ヴァル・エンコースが統治しています。


なお、バラザールの砦では豚が大量に飼われているため、ヴォタンク人からは「豚飼い」と呼ばれていたりするらしい。


異邦人は、おもにルナー人とオーランス人です。
ルナー人は、さきほどのエルコイ砦に一部隊が駐留している関係と、エティリーズのカルトが(たぶん)ダラ・ハッパ向けの奴隷貿易をおこなっています。ルナー人はあっさりとエルコイ砦を征服したため、バラザール人に恐れられています。
オーランス人は、サーター征服後に流入した人たちが多いようです。トルリスのヤラリング王がディケーネ砦への対抗策として砦内に「光持ち帰りし者たちの寺院」を建立することを認めたため、トルリスがオーランス信仰の中心になっています。イサリーズのカルトなんかもここを貿易拠点としています。

「古老が語ってくれたこと」:ヴォタンク社会について

ヴォタンク人の文化は孤立しており、異文化嫌いです。彼らは外見上はバラザールの部族とよく似ています。

あなたはどなたですか?

わしは「烏喰い」の部族の炉辺の母、“柔らかい肌の三羽根”じゃ。そちはわしを“誉れの母”、あるいは“老三羽根”とよぶがよい。

老三羽根さま、私たちは何者なのでしょうか?

そちはわしの炉辺の一員じゃ。よって「烏喰い」の一員でもある。わしらはヴォタンクさまの、まことの信者じゃ。

老三羽根さま、どうして我らは偉大なのでしょうか?

異国に染まったバラザールの輩とちがって、わしらはヴォタンクさまと大地の祖母さまの教えに忠実にしたがっておる。それでわしらは偉大なのじゃ。

老三羽根さま、男と女はどうちがうのでしょうか?

男衆は狩りをする。女衆は採集する。そこが違う。男は部族を守り、女は聖なる火の番をし、食事をつくり、子供を育てる。わしらのために、ご先祖さまがお決めになったことじゃ。どちらも、部族が生き残るためには必要じゃ。

老三羽根さま、私たちはどこに住んでいるのですか?

わしらは「古き荒野」とよばれる地に住んでいる。失われた故郷ヴォタンクランドのへりにあるところじゃ。

老三羽根さま、私たちはなにをして暮らしているのですか?

男は狩りをし、女は採集する。ただ、魚釣りはどちらもする。その仕事は、聖なる伝承ではなにも語られておらんのでな。

老三羽根さま、私の人生で大切なものはなんですか?

わしらの知識とやり方を学ぶのじゃ。部族のためになるように技を磨くのじゃ。かみがみと、この地の精霊とご先祖さまをあがめることじゃ。

老三羽根さま、私たちの支配者は?

だれもわしらを支配しないよ。わしらは自分たちを治めておる。炉辺と人々は、自分でやることを決めるのじゃ。もちろん、伝統に従ってな。そして、わしら古老の助言にも…

老三羽根さま、なにが人間を偉大にするのですか?

なにもわしらを偉大にはしないよ。誰でも部族のなかでの役割がある。ご先祖さまのやり方への服従と、お互いへの信頼がわしらを偉大にするのよ。「捨子」さまの「狩りの達人」の呼び名を得るのはたしかに偉大だが、それは狩人として偉大なだけじゃ。

老三羽根さま、悪とはなんですか?

変化はもっとも悪い。混沌は悪じゃ。非人間や異国人も悪い。どれもわしらの伝統を敬わず、変化をもたらそうとするからじゃ。

老三羽根さま、私の運命は何ですか?

お前さんはヴォタンク人として生まれて幸運じゃ。ほかの者はただしい道をそれてしまった。わしらのみが、死後に極楽へ行けるのよ。

老三羽根さま、他の者をどう扱えばよいのでしょう?

できるだけよそ者は避けるがよい。よそ者は変化をもたらす。変化は悪じゃ。やつばらが逃げるのであればそうさせておくがよい。しかし、他にやりようがなければ、殺すしかないじゃろう。

老三羽根さま、私たちの敵は何者ですか?

わしらを殺すもの。法をおかすもの。わしらを変えようとするものたちじゃ。

老三羽根さま、私たちの神々は?

わしらは「祖父なるヴォタンク」さまと「大地の祖母」さま、「友なる犬」さま、「炉辺の火」さまと「捨子」さまを信じておる。わしらが必要で、ヴォタンクさまがそう決めたかみがみじゃ。
また、この地にすまうただしい精霊たちも信仰しておる。

老三羽根さま、私が期待されていることは?

生き残り部族のためになるよう、伝統を学び、技を磨くこと。かみがみを讃えて信じること、部族のよい一員になること。できうるときには、遊ぶときは遊ぶこと。生きることを楽しむことじゃ。

バラザールの歴史

-100 連合評議会、退いた氷河の後に入植する。人口増加。[BCG]
0 “曙”。[GB]
78 古き荒野の「全種族評議会」が「世界友邦評議会」に加盟。[BCG]

エルフ、ドワーフ、トロウル、ドラゴニュート、ヴォタンク人の同盟。

80 世界友邦評議会、セアードに“ハイアロールの子ら”を発見。[D:LoD]
375 「太陽停止」。天空で太陽が停止。「時」が崩壊し、ドラストールに“完全なるもの”が誕生。直ちに“輝けるもの”ナイサロールと改名される。[CotHW#1]

エルフとドワーフはナイサロールに協力。トロウルは壊れた評議会を離脱。古の種族による戦争が始まる。

450 ペントの遊牧民からの援助を得たアーカットがドラゴン・パスより軍勢を率いダラ・ハッパを侵略。その後ドラストールへ反転するとナイサロールを殺し、ドラストールを眠れる廃墟とする。[CotHW#1]

古の種族による戦争が激化、全種族が弱体化。相対的にヴォタンク人のプレゼンスが強まる。

562 陽の天蓋の軍団がホーレイの都市に定住する。[UL]
717 赤の平原より遊牧民の一団がヴォタンキランド(バラザール)を通過。[GM]
718 ヴォタンク族の狩人がウズとドラゴニュートの協力で赤の平原の一団を不意打ちし、「高き橋の戦い」で破る。[GM]
721 EWFはエルフとヴォタンク族を助け、ウズとドワーフをヴォタンキランドより放逐する。[UL]
747 ウズがドワーフの拠点グレートウェイを侵略、大成果を収める。[UL]
826 EWFの実権がドラゴニュートから人間に移る。EWFは「第三評議会」と呼ばれるになった。[KoS,GM]
889 “竜と話すもの”イスガンドラングが神として自分を礼拝するよう要求する。[KoS,GM]
890 古の荒野のエルフがEWFより離脱。[GM]
905 スルヴィルストールに率いられたカルマニア軍がブローリアを通過しアナディキでドラゴンを攻撃。「三竜の落ちた戦い」。彼はその地に王朝を打ち立てた。[FS]
921 カルヴァンヤール(カルマニア王)がシリーラと北ヴァンチをEWFから解放する。[FS]
925 カルヴァンヤールがセアードを解放、ダラ・ハッパよりEWFを排除する。彼は軍を返して北で騎馬遊牧民と戦った。[FS]
947 EWFが軍を送りヴァンチとシリーラを回復。[FS]
955 カルマニア軍がジラーロでドラゴンを殺し、セアードをEWFより解放する。[FS]
1042 ドラゴニュートの裏切りにより、EWFの指導者は全て一夜にして暗殺された。[G:CoHW]
1082 バラザールがヴォタンキランドに入り、サルカントゥス(イェルマリオ)のカルトを広める。[GM]
1087 ヴォタンクランドの民にバラザールが指導者として認められる。[GM]
1120 「真なる黄金の群れ」がドラゴン・パスへ入る。「ドラゴンキル戦争」。死線と十字線が築かれ、ドラゴン・パスは無人となる。[KoS]
1250頃 ディケーネ砦が三巨人に破壊される。[GM]
1300頃 ルナー帝国に征服されたホーレイから流民がバラザールに流入。[GM]
1362 「落ちる丘の戦い」。ターシュ王国の双子がルナー帝国に勝利。以後、流民はターシュへ向かう。[GM]
1564 エルコイ砦の度重なる襲撃に業を煮やしたルナー連隊が砦を襲撃。王を殺して傀儡の王を立てる。[GM]
1580 ディケーネ砦がスキルフィル王により再建される。

トリルス砦


砦のひとつ、バラザールのまんなかにあるトリルス砦の紹介。


概略

 トリルスはバラザールの3人の息子のうち長男だった。兄弟の相続争いの口論のなかで、彼らは父の残した2つの砦の所有者を、くじ引きで選ぶことにした。そうしてトリルス砦は彼のものとなったのである。それ以降、トリルスではとりたて大きな災難なく歴史を経てきた。ディケーネ砦との間の「勝者なき戦い」は約30年前のこととなる。
 近年最大の出来事は、ヤラリング王の「豚追放」布告であった。王は豚飼いたちに砦の城壁の外へ出ていくように命じ、砦外に檻と家畜小屋を建てさせたのである。ヤラリングはまた「光持ち帰りし者たち」のカルトを迎え入れて寺院を建立した。それは異邦人の進んだ技術を管理可能範囲におき、ディケーネのスキルフィル王から遠ざけることを意図してのことであった。
 近年、ヤラリング王は古き荒野のエルフたちから接触を受けている。彼らはドワーフたちとの諍いに関する助力を求めている。いまだなにも合意には至っていないが、トリルスではときおりエルフたちを目にすることがある。

人口

  • 総人口:1300人
  • 成人男性:440人
    • 戦士:160人
    • 狩人:100人
    • 聖職:13人
    • 奴隷・奉公人・職人:56人
    • 豚飼い:185人
    • 異邦人:20人

著名な人物

ヤラリング王、“怪物殺し” King Yaraling Monsterslayer

 ヤラリング王は征服者である。2彼と仲間たちは200年にわたって続いた前王朝を覆して砦を奪った。彼は前の為政者とは違い、民の愛と尊敬を得て君臨している。
 氏族の長の息子として生まれ、狩人として生長したヤラリングは、運命の導きで王となった。現在31歳の王は、エルコイとディケーネの砦の襲撃で名をはせ、混沌の怪物との一対一の決闘で“怪物殺し”の二つ名を得ることになった。ヤラリングは冒険の日々を恋いこがれているが、砦と家族への愛が彼を砦にしばりつけている。
 ヤラリングは王となって10年になるが、基本的には田舎者で、狩人の偏見を抱いている。有名な「豚追放」の布告は、狩人としての家畜への偏見にもとづくものであった。好き嫌いは激しいが、(豚に関すること以外は)あまりそれを面に出したりはしない。王は捨子の習わしを尊び、“狩人の主”のためには我が意を曲げることもある。
 ヤラリングは妻を非常に愛している。妻に対する悪口がヤラリング王の耳に入れば、悪口を公言した者は王の個人的な挑戦を受けることになるだろう。もっとも、たいていは決闘ではなく、狩りによる腕比べという結果に落ち着く。
 妻や子供たちが危害を加えられたなら、ヤラリングは自分の指揮下にある全軍を率いて犯人を駆り出し、殺すことだろう。

ヴァーニア女王 Queen Vania

 ヤラリング王の妻は有能な女戦士で、王の隣りで戦うこともしばしばである。彼女の魅力ははかなげな美貌ではなく、その躍動的なカリスマにある。ヤラリング王は妾は必要ない。彼女はヤルヴァン、メリッセリア、そして赤ん坊のガンガンの母親である。

ルヴァン Yalvann

 彼はヤラリングの世継ぎである。年の頃は13才、反抗期である。ヤラリングは天性の野性味を残しているが、ヤルヴァンは非常な俗物根性(スノッビズム)を身につけいる。この少年は階級意識に凝り固まっており、自分より地位の劣る者たち(ほとんどすべての者たちを意味する)とつき合うことを嫌っている。ヤラリングは自分の息子の欠点に気付いているが、いつの日か情緒的にも成長するだろうと信じている。

メリッセリアとガンガン Melisseria and Gan-Gan

 彼女たちはヤラリングの娘である。メリッセリアはようやく5才、ガンガンに至ってはまだ赤ん坊である。

“狩人の主” The Master Hunter

 捨子の習わし(狩人の精霊信仰)の指導者で、1年ごとに最も優れた狩人が選ばれる(プレイヤーキャラクターがこの地位を得ることも可能)。“狩人の主”は誰であれ、超然として神秘的な人物である。“主”は狩人以外と交流することはない。(※RQでのゲーム用語では「狩りの達人」ですが、ちょっと変更)

ジム・ミス Djim Mith

 ジム・ミスは交易商人ジョー・ミスとその妻ジックス・ポルブの間の息子で、砦のイサリーズの信仰を取り仕切っている。また彼は砦の宿のひとつ、「串刺し豚亭」を経営している。22才の痩せこけた若い男。「串刺し豚亭」は、ジョー・ミスの隊商の拠点としての役割を果たしており、父の不在時は買い付け人の役もこなしている。

リーガス、“白髪の” RHegus Whitehair

 リーガスは「赤熊亭」の経営者で、ルナーの交易の神エティリーズの入信者である。乱髪の白髪の若者。まだ若いことに加え、彼がトリルスに来たときには白髪ではなかったことで、「魔物と交流があるのだ」という噂がある。ルナーからきた旅人は、必ず彼の宿に宿泊する。

ユークレイア、“嵐の従者” Eucleia Stormfollower

 彼女は野心家の女性で、バラザールにおける冒険者オーランスの大司祭になることを最終目標としている。彼女はディケーネ砦の王、“炉をも貫く”スキルフィル王の認知された庶出の娘である。しかし、バラザール人の伝統を破って異邦のカルトに加わることを選んだために、家族とは絶縁状態にある。しかし、公の態度とは裏腹に、スキルフィル王はいまだに我が子のことを気にかけており、絶えず彼女の動向について情報を集めている。もし彼女が殺されたなら、王は密かに、王位退位の準備と彼女を殺した者たちへの懲罰を計画することだろう。ユークレイアと、彼女の異母姉妹でイェルマリオ・サルカントゥスの女祭であるスターニャの間には、強いライバル意識が存在する。しかし、どちらかがトラブルに巻き込まれたなら、どちらも労を惜しまず相手を助けるだろう。ユークレイアは恋人というものをもったことはないが、最近自分の人生になにか足りないものがあると感じ始めている。


遭遇表

砦での遭遇

d20 遭遇
01-05 豚飼いと豚たち
06-07 砦の戦士たち
08 ヤラリング王と砦の戦士たち
09 “狩人の主”
10 オーランス
11 ズシ・ソーン(チャラーナ・アローイの女祭)
12 ブルーバード(ランカー・マイの司祭)
13 交易商たち
14 “強き樹皮”(エルフの男性)と一行
15-16 バラザール人の狩人たち
17 伝令
18 「特別な人物表」で振り直し
19 ハルシオン・ヴァル・エンコースとルナー小隊
20 子供たち

「光持ち帰りし者たちの寺院」の遭遇表

d100 そこにいる者
01-05 光持ち帰りし者たちの信徒はいない。砦の戦士のみ。
06-30 ズシ・ソーン(チャラーナ・アローイの女祭)
31-40 「光持ち帰りし者たちの指導者」表から1名
41-50 ズシ・ソーンと「光持ち帰りし者たちの指導者」表から1名
51-85 2回振る(51以上は無視)
86-95 3回振る(51以上は無視)
96-00 全員が寺院にいる

光持ち帰りし者たちの指導者表

d6 人物
1 ブルーバード、ランカー・マイの司祭
2 ペイ・サニー、冒険者オーランスの司祭
3 トーラス・マノーヴァー、冒険者オーランスの大司祭
4 ジックス・ポルブ、イサリーズの女祭
5 ジョー・ミス、イサリーズの司祭
6 ズシ・ソーン、チャラーナ・アローイの女祭

宿にいるもの表

  • 3d8で人数を決定。うち3人は宿の主、用心棒、用聞き。それぞれについて表で振る。
d20 居合わせたもの
01 芸人
02 売春婦
03 使い走りの少年
04-07 砦の労働者たち
08-10 豚飼いたち
11-14 砦の戦士たち
15-16 狩人たち
17 「砦の遭遇表」で振り直し
18 「特別な人物表」で振り直し
19 この地域の指導者、種類は振り直して17以上は無視する
20 「宿の特殊遭遇表」へ

特別な人物表

d10 遭遇
01 “緑くちばしの”ワドル(雄ダック)
02 エラップ・バーバーコン(吟遊詩人)
03 マルコール・メルム(盗賊)
04 “ワシの眼”ジョルニ(探鉱師)
05 “折れた小枝”(はぐれエルフ)
06 “蒼顔”(大祈祷師)
07 ブルーバード(ランカー・マイの司祭)
08 ジョー・ミス(交易商人)
09 ハルシオン・ヴァル・エンコース(ルナー長官)
10 “やかまし屋”マルーサ(魔女ジャーカリール)

宿の特殊遭遇表

d10 遭遇
01 エルフ
02 ドワーフ
03 トロウル
04 オーガ
05 バブーン
06 オーランス信徒
07 トロウルキン
08 カルト指導者(この表でd6を振り種族を決定)
09 砦の王家の人物(お忍び)、警護なし
10 同じタイプの者2人(この表で振り直し、10は無視)

ルーモアーズ(噂):トリルス編 [プレイヤー向け]

記号は、


[T]……噂は真実である。
[F]……噂は間違っている。
[M]……噂は一般的すぎて意味がない。
[R]……レフリー(GM)が真偽を決定する。
[B]……噂はほぼ正しいが、一部間違っている。


ということを表しています。

  • ディケーネ砦のスキルフィル王は、“炉を貫くもの”という素晴らしい槍をもっている。そいつは標的に必ず当たって、手元に戻ってくるらしい。[T]
  • 古き荒野のゴーク丘陵にいたヴァンパイアは滅ぼされたらしい。[T]
  • 岩の森山脈の「巨人の地」にいる巨人は友好的らしい。[T]
  • 有名な巨人ゴン・オルタは、この世にあるありとあらゆる魔法の品を売ってくれるらしい。[B]
  • エルフ海の沿岸には、古いドワーフの廃墟があって、そこには魔法のカヌーが隠されているらしい。[F]
  • 環状立石のまわりで踊りくるう巨大トカゲがいたらしい。[R]
  • エルオールの森にルナーの司祭が招かれたらしい。エルフの森に寺院を作るんだそうだ。[F]
  • オーランスの大司祭トーラス・マノーヴァーは、ロンズ森でエルフの樹木船を見つけたらしい。[F]
  • 大祈祷師の“蒼顔”によれば、最近バラザールで悪しき精霊の信仰が広まっているそうだ。[T]
  • ディケーネの狩人が、枯れ木に磔にされて見つかったそうだ。その身体にはエルフの矢が刺さっていたらしい。[R]
  • 交易商人のジョー・ミスは、古き荒野へ何回も不思議な旅をしているらしい。その度に数ヶ月いなくなるらしいが。[T]
  • 古き荒野にはエルフがたくさんいるらしい。[T]
  • ドラゴン・パスが平和になったので、ルナーは次はトリルス砦とディケーネ砦を狙っているらしい。[R]
  • ティラノサウルス・レックスの群れが古き荒野をうろついており、動くものなら何でも襲って食べているらしい。[F]
  • ディケーネ砦は、岩の森山脈の南部へ狩人を派遣する準備をしているようだ。[T]
  • 岩の森山脈の北東には、眠れる巨人たちがいるらしい。その巨人たちは、時の始まる前に、神々によって巨人族への警告として眠らされたのだそうだ。[T]
  • 遙かな西方から来た魔道士が、古き荒野に魔法の城を築いたそうだ。[F]
  • ドワーフの居住地グレートウェイが、巨大蜘蛛に襲われたらしい。[F]
  • 古き荒野には、赤い実をならせるある木がある。その実を採って皮につつみ4週間おく。すると価値は低いが宝石に変わるらしい。[F]
  • 狩人たちが4人の昼間でも火花を散らしている小人が平原を歩いているのを見たといっている。大声で呼びかけると、彼らは煙を吐き出し、雷を出しながら喋ったらしい。それで1人は死んじまって、もう一人はしびれて動けなくなったんだとさ。[R]

エルコイ砦


概略

 エルコイ砦は3つの出来事で有名である。1つは、魔術で支配された巨人たちによって築かれたこと。そしてルナーに征服されたこと。最後に、ペローリアから導入された技術を使って、悪名高いエルコイ・ビールが醸造されることである。

 エルコイは英雄バラザールの末子だった。ドラゴンキル戦争で父が亡くなった後、兄トルリスと姉ディケーネはそれぞれ父の築いた砦を継承したが、彼には遺産は与えられなかった。バラザールの技術では砦を築くことができない事を知った彼は、ひとり探索の旅にでた。そして魔法の指輪によって支配された3巨人を連れて帰還すると、自分のために砦を作らせたのである。そして、砦が完成すると、巨人に全て忘れるように命じて立ち去らせた。(だが後に彼らはこのことを思いだし、復讐として ―― 誤って ―― ディケーネ砦を破壊した)

 度重なる領内の略奪にいらだったルナー帝国の一部隊が砦を急襲し、エルコイ王家を一掃して傀儡の王家をたてたのは、1564年のことである。以降、砦は農業、醸造、冶金、官僚制度といったものを輸入してきた。エルコイ砦は、「車輪」といった先端技術を知らないバラザール人にとっては驚異の場所である。
 ルナー人の支配者は、近年トルリス砦に「光持ち帰りし者たち」の信者が住み着いたことに重大な関心をもっている。彼らは、バラザールからプラックスへの交易路を開くことに興味をもっているという。また、トルリス砦とディケーネ砦への侵攻の噂は絶えたことがない。

人口

  • 総人口:1750人
  • 成人男子:580人
    • 近衛戦士:30人(うち女性6名)
    • 狩人:50人
    • 聖職(ルナー含む):17人
    • 奴隷・奉公人・職人:80人
    • 豚飼い:50人
    • 農民:250人
    • 異邦人:50人
    • ルナー小隊:200人(うち女性40名)


  1. 南道と巨人門
  2. エルコイの樫
  3. エルコイの英雄の社
  4. 会所
  5. 王の宿
  6. 豚門
  7. 豚街
  8. 北門(あるいは「赤い月の門」)
  9. 七母神司祭の館
  10. ルナーの宿営地と七母神の寺院
  11. ルナー駐屯地
  12. 壁外の街
  13. 交易商人の倉庫
  14. 戦士の広間
  15. 外の宮
  16. 戦士の館
  17. ネクロポリス
  18. エルコイ宮
  19. エルコイの宝物庫
  20. イェルマリオ寺院

著名な人物

“善人”グリプタス王 King Glyptus the Good

 ルナーの傀儡。彼の王朝は、征服者を力の源泉としている。グリプタスは惰弱で臆病な男で、ほかの砦であれば王位を追放されるであろう。農民や豚飼いは彼を「善王」と考えるかもしれないが、氏族の狩人たちはその権威を認めずあざ笑っている。

ジョーセスティス王妃 Jocestis

 グリプタス王の奥方で35歳。グリプタスの生活を取り仕切っている威張りちらした女性である。彼女はルナー帝国の小貴族の二女であった。ジョーセスティスは七母神の一柱である魔女ジャーカリールの教派に属している。彼女は女祭マルーサと親しく、彼女の計画にたびたび参画する。また王妃は「邪鬼」の司祭であるオーガのゴンドー・ホルストと知り合いである。ジョーセスティスは2人の息子と1人の娘を産んでいる。彼女は余所者に過度の疑いを抱いており、グリプタスが個人的に彼らと面会することを決して許さない。

シルヴェイウス Sylveius

 グリプタスの22歳になる跡取り。シルヴェイウスは弱々しくか弱い男性で、女性のように長い髪をしている。当地では女装と髪の手入れに長けているとのもっぱらの噂である。

ヘシス Hecis(“毒殺者”と綽名される)

 彼女はジョーセスティスの2番目の子供である。21歳。彼女はとても謎めいた状況で三度も未亡人となっている。化粧した彼女はとても魅力的に見えるが、真に美しいというわけではない。
 彼女は余所から来た冒険者のひとりと夜を過ごすのを好む。歓を尽くした後、彼女は恋人の酒の中に毒を混入する。ヘシスのもてなしを受けた者は、もう二度と朝陽を拝むことはないだろう。途中で邪魔をされたり、相手に襲われたりすると、彼女は悲鳴をあげる。すると重武装した護衛の兵士の半数がかけつける。

ハルシオン・ヴァル・エンコース Halcyon Var Encorth

 ハルシオンは尊大で自己中心的な男である。彼はルナー属領地保安担当官の片腕で、マルーサは彼の直属の部下である。ハルシオンは信頼のおける男ではない。砦にいるときは、彼は最新の計画を練っていることが多い。彼は当地の支配長官であり、属領地総督と駐屯部隊長への助言を期待されている。
 ハルシオンは最近、部下のマルーサと南方エスロリアへ旅し、「混沌の聖地」という場所について記された巻物を手に入れている。またそれ以後、彼は「ブルーバード」というランカー・マイの司祭について非常な注意を払うようになっている。(まりおん補注:HQ化するときは、啓発済み/マカベイウス・エイザール信徒あたりにするとよいかもしれない)

“やかまし屋”マルーサ Marusa the Shrew

 魔女ジャーカリールの聖別者。彼女はハルシオン・ヴァル・エンコースのバラザール支配の監督者である。彼女は活動的で外見はとても魅力的だが、ひどい癇癪もちで、その弁舌は毒殺用の短剣のよう。また非常に短気である。彼女の邪魔をして生き延びているものはほとんどいない。彼女はハルシオンのために、不法な暗殺計画の手筈を整えている。彼女は無法者や余所者を任務に使うことを好む。

エラフィオン Eraphion

 19歳のエラフィオンは、グリプタス王の一番若い息子である。あるいは、だった。成人する直前の11歳のとき、彼は家を逃げ出し、戻らないことに決めた。このため彼はエルコイの英雄となってしまった。貧乏農民たちのあいだでは、エラフィオンは軍を率いてエルコイに帰還し、砦をルナーの支配から解放してくれることになっている。だが実際には、少年は南へと旅し、旅芸人の一座に加わった。7年のあいだ各地を旅し、たくさんのことを学んだ。エラフィオンは名を変え、放浪の詩人エラップ・バーバーコンとしてバラザールに舞い戻っている。

エラップ・バーバーコン Errap Barbacon

 南から来た不思議な詩人。ドナンダー信者で、完璧なエルコイ訛りのバラザール語を話す。自分のこと以外はつつみかくさず何でも語るが、叙事詩や歌を披露するほうが多い。若いが、非常に深い知識をもっているようである。すらりとした容姿にだまされる者が多いが、実は力が強くダガーの達人でもある。エラップは当地の伝説や恋愛の伝承を集めている。また自身もディケーネ砦の王女ふたり(“嵐の砕き手”スターニャと“嵐の従者”ユークレイア)の興味をもっており、どちらか(あるいは両方と)一夜なりとも共にできないかと考えている。(まりおん補注:……グインサーガのマリウスみたいだ)

“豪胆”ユーリプタス Euryptus the Bold

 ユーリプタスは55歳、ヤーナファル・ターニルズの聖別者である。彼は公正かつ厳格であり、これは相手のカルトや種族、出身地といったことには関係ない。この小柄で禿頭の男が恐れられかつ尊敬されていることを初対面の者には考えられないだろう。
 ユーリプタスはエルコイ内外の情勢をよく知っており、トルリスの事情にも通じている。バラザール各地の情報が彼の机の上に載せられ、彼の耳に入れられる。彼はエルコイに新しい一団が来るとすぐにそれを知り、10%(1日ごとに加算していく)の確率で、一行の砦に来た目的、任務、誰にあったか、何処からやって来たのか、を調べ上げることができる。新しくやってきた旅人がエルコイの治安にとって脅威になると思ったなら、事情がはっきりするまで捕縛し拘留する。

サイリエル・エンデルカー

 サイリエル・エンデルカーはルナー市民でエティリーズの聖別者であり、エルコイで大きな商いをしている。彼はグリプタス王の友人で、個人的に冒険交易に出資していることで知られている。

“木の心の”タクロング

 老タクロングはイェルマリオの大司祭であり、寡黙で生真面目な人物である。ルナーの施策のため、イェルマリオはエルコイでは王家の保護を受けていない。彼はエルコイの民がルナーの「文明」に毒されていくことにとても心を痛めている。砦間の抗争には興味はなく、些細な諍いは避けようとする。タクロングは、砦のあいだを自由にいききできる数少ない人物のひとりである。

遭遇表

砦での遭遇

d20 遭遇
01 豚飼いと豚たち
02 奉公人
03-04 農民
05 収穫物をもった農民
06 砦の戦士たち
07 グリプタス王と砦の戦士たち
08-09 ルナーパトロール
10 “豪胆”ユーリプタスとルナーパトロール
11 バラザールの狩人たち
12 「特別な人物表」で振り直し
13 ハルシオン・ヴァル・エンコース
14 サイリエル・エンデルカー
15 イサリーズの商人
16 “やかまし屋”マルーサ
17 イェルマリオの司祭“木の心”タクロング
18 伝令
20 子供たちの群れ