ルーンクエスト情報局

新ルーンクエストの情報です。

Ian Cooper 氏のシナリオ論

Ian Cooper 氏は、HeroQuest ラインでキャンペーンセッティング集「The Coming Storm」「Eleven Lights」を書いている人です。
「The Coming Storm」はセッティング集なのですが、いろいろなトラブルをはらんだ共同体がいくつも紹介されていて読んでいて楽しいサプリメントです。


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その Ian 氏が、MLに氏のシナリオ作成術を披露しておりました。
なかなか参考になると思います。



GOOD STORIES are ones that HAVE CONFLICT.
CONFLICT REVEALS CHARACTER because it forces people to MAKE CHOICES.
Stories are about people MAKING CHOICES.


CONFLICT BETWEEN PEOPLE IS MORE INTERESTING than conflict with abstract forces.
CONFLICT WITHIN A COMMUNITY IS MORE INTERESTING than conflict with external forces.
BEFORE THE GAME STARTS conflicts within a community should be in STASIS OR STATUS QUO.
As the game starts A CRISIS DRIVES THE CONFLICT within the community out of equilibrium and into a new phase.
The CRISIS may be the result of abstract forces or external forces.
That is the role of such forces within the story, to drive the conflict within the community, which is what interests us.


The HEROES HAVE RELATIONSHIPS with people within their community.
Those relationships may be on BOTH SIDES. As the crisis develops the heroes must MAKE CHOICES about who they support, and how they OVERCOME INTERNAL DIVISION to deal with EXTERNAL THREATS.
At the end of the game CHOICES WILL HAVE BEEN MADE, the status quo overturned, AND NOTHING WILL BE THE SAME.

  • 良い物語とは、争い/葛藤のあるものである。
  • 争い/葛藤はキャラクターを明らかにする。選択を強いるからである。物語とは、選択をする人についてのものである。
  • 人と人との間の争い/葛藤の方が、あいまいな力との争い/葛藤よりおもしろい。
  • 共同体のなかの争い/葛藤の方が、外部との争い/葛藤よりもおもしろい。
  • ゲーム開始前は、共同体のなかの争いは均斉状態にあるべきだ。
  • ゲームが始まったあと、ある危機が争いを表出させ、新しい段階に入る。
  • この「危機」は、外部の力であったり、あいまいな力の結果であるかもしれない。
    • 物語では、そのようなものは共同体の中の争い/葛藤を起こす役割をもつ
  • プレイヤーヒーロー(PC)たちは共同体の人々と縁故を持つ。
  • その縁故は、両方の側に対してのものかもしれない。危機が進むにつれ、PCたちはどちらの側を助けるのか、外部の脅威に対抗するためにいかに内部の分裂をおさめるかを選択しなければならない。
  • ゲームの最後において、選択がなされ、いまあるものは覆され、何もかもが以前とは同じではなくなる。

簡明な例としては、サム、ゴクリ、フロドのモルドールへの旅があげられるだろう。外部の力、たとえばシェロブやオークは、彼らの関係の強さ、あるいは弱さを見せるためだけに働いている。


まず、「共同体=PC関係者のあいだの葛藤をつくり、それに対しての外部の脅威をつくる」という手順になるのかと思います。


各論では、共同体の作り方、「じゃあ俺、船で航海するキャンペーンやっているんだけどどうしたらいい?」という質問に答えたものと、氏のつくった共同体の例として、東方諸島のチャンパヤというところの設定になります。

共同体の作り方

  • 共同体をつくる。
  • 1つか、1つ以上(長いゲームの場合)の「コンフリクト(衝突)」を共同体の中で作る。
  • 衝突しているグループ間に緊張緩和(detente)をつくる。
  • 共同体と結びつきがあるキャラクターを作成してもらう(または既存キャラクターに共同体への結びつきをつくってもらう)
    • キャラクターがアビリティとしてリストアップしてあることをコンフリクトと結びつける。
    • それがプレイヤーがキャラクターがプレイに望んでいる現れ方であり、GMの「フラッグ」になる。
      • 「剣攻撃」が高いキャラクターは、暴力的な衝突を望んでいる、etc.
  • 「危機」が発生したとき、「コンフリクト」がどうなるか、再検討/刷新する。
  • プレイヤーたちは、「危機」を克服するために、「コンフリクト」の中で選択をおこなわねばならなくなる。

(例)「来るべき嵐」キャンペーンのセッティング

  • 「コンフリクト」:氏族の中でのルナーの道への改宗者たち;「月の風」
  • ルナー宣教師を迎えた前族長の時代は、氏族はルナー信仰を大目に見ていた
  • しかし、「ドラゴンの目覚め」(1625年)により帝国軍はサーターから去り、サーターから改宗者は追放された
  • レッドカウ氏族ではこの裏切り者のかつての血族をどう扱うのだろうか?
  • コンフリクトをゲーム内で扱うキーポイント:GMは、ソースマテリアルを絶対視してはいけない。
  • たとえば「すべての氏族では、ドラゴンの目覚めのあと、すべての改宗者たちを追放したはずだ」と言ってはいけない。それは、ゲームの可能性を削ぐ。
    • 私は、ジョムズ・ウルフ(サーターに領地を与えられたルナー将軍)が残っており、氏族の伝統的な敵テルモリとの戦いのために現在のところ容認されているということにした

たとえば海洋冒険ものでは?


  • 問題点:次の航海でどこに行くか分からないから共同体と結びつきなんてできないよ!
  • 解決法1:船の中=共同体としてはどうか。
    • 狂った船長、野心的な副船長、
    • スタートレックは船=共同体として見た場合の「完璧な手本」だ。(キャラクターをシナリオ中どう演出するかも含めて)
  • 解決法2:立ち寄った場所の共同体のどちらにつくかを、プレイヤー各自に選ばせる。
    • その際、全貌を見せる前に選ばせる方法と、事件を起こす前に共同体とある程度過ごさせる方法がある。

東方諸島でのシナリオの例

  • (まりおん注:東方諸島については→東方世界メモ)
  • まずゲームを始めるのに、どこのコミュニティがいいかと考えた。
  • ハラガラ共和国がよさそうだと決めた。
  • インドネシアのイメージで、ウィキペディアRPG.netで資料探し
  • ライトアップを読み、「黄金派」と「白銀派」というものがあり、これをコンフリクトとして使うことにする。(まりおん注:Tales #17 にあるらしい。手元にないので未確認)
  • TVシリーズの「ローマ」から派閥対立を流用、両派のキャストを設定
  • 夢魔術の使い手をいれてローカルカラーを出す
  • キャラクターをコンフリクトに引き込むために、プレイヤーの1人に地元の事件にかかわる設定をつくるよう依頼する
  • チャンパヤ(注:ハラガラの首都)に入ると、白銀派からの接触を受け、また「危機」として起こした事件のニュースを与える。「商王ジャディルロが死んだ」
  • 「船長たちの評議会」と都市のコントロールをめぐって、PCたちは両派のあいだで選択を行わねばならなくなる。


以上、シナリオ作りの参考にされてはいかがでしょうか。