絶版になっているファンジンTOME #1 から、「おに!あくま!こんとん!」という記事を再録。
副題は「ちょーマイナー混沌カルト」です。
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ラメリ「はい、みなさんこんにちわー! メジャーな混沌とはだいたいやりあっちゃって、シナリオネタに困っているGMはいないかな? 今回は、ちょーマイナーな混沌について解説をしてもらって、楽しんでもらおうという企画です!
なお、インタビュアーは、“ジョンスタウンの象牙の塔に咲く一輪の姫ゆり”こと、ラメリちゃんでおおくりしまーす!」
リオーズ「……鬼百合の間違いじゃないの?」
ラメリ「(ぼかっ)さて、今回はランカー・マイ寺院にこもって一人暗く混沌の研究をtづけている、リオーズさんに来てもらっています。」
リオーズ「いてててて。この乱暴娘!それに、なんだって?そんなこと言ってると、研修生論文みてやんないぞ。」
ラメリ「あ、うー。うそうそ。冗談だってばこの美形のおにーさんっ」
リオーズ「はいはい。ともかく、今日はマイナーな混沌神について聞きに来たんだろ。早く話をすすめろよな。」
ラメリ「(……イツカ殺ス。)じゃあ、先生。軽くいっちょお願いします」
リオーズ「じゃあ軽くいってみよう。」
グルームシャーク Gloomshark
ルーン:「飢え」「混沌」「水」、混沌の飢えの源
ラメリ「ほほう。いきなり知らない名前を……さすが混沌おたく」
リオーズ「あのなあ……。「神名禄」でも紹介されているメジャーな(←?)神だろ!
……まあともかく。グルームシャークは、グローランサの大洋を泳ぐ怪物だ。帰郷洋あたりにも回遊しているらしい。グルームシャークは飢えの源であり、その底なしの胃袋に飲み込まれたものは世界から永久に失われる。グルームシャークは、魚人の間で有名らしいが、あいつらは神像をつくらんから、どういう姿をしているかはっきりしないな。人間の船乗りは多くのヒレを持った巨大な甲殻魚として描くようだ。
グルームシャークに捧げられるのは、常に知性のある種族だけ。通常崇拝者も自分自身の身体の一部を捧げなくてはならない。」
ラメリ「クリムゾン・バットみたいな奴だねぇ」
リオーズ「うん。俺なんかは、クリムゾン・バット、はらぺこジャック、グルームシャークを“グローランサ三大なんでも喰っちゃうカルト”と名付けている。」
ラメリ「そのまんまね(笑)。……まあ、こいつは海の冒険しない限りはかんけーないかな。」
リオーズ「グローランサでは最近まで遠洋の航海できなかったし(海の大閉鎖)、海の神々がよーわからん連中ばっかりだったからなぁ。だが最近ではドーマルやマガスタのカルトについて研究がすすんでるから、そのうち突然海にいくことになるかもしれないぞ。」
ラメリ「“冒険者は必ず難破する”……誰の格言だったかな。」
イーカズ Ikadz
ルーン:「無秩序」、「死」 苦痛と拷問の神
ラメリ「(神名禄を読んでる)……フマクトの仇敵、らしいね。」
リオーズ「死を冒涜するものとして、マリア、ヴィーヴァモートと共に、イーカズはフマクトとは不倶戴天の仲だ。イーカズ信者はチャラーナ・アローイやフマクトの信者をいためつけると、とてもうれしいらしい」
ラメリ「うーん。信者はムチでピシパーシ!ってかんじなのかな。ほら、変な趣味をもっているとか。」
リオーズ「変な趣味……? いや、どんなことをしているのかはあとのページの「血塗られた死」という拷問に関する記事をみてくれ。(注:そういう記事が載ってました)
あとは皮膚の中に虫をはい回らせるとか、しずくのポタリポタリと垂れる音をずっと聞かせるとか、傷口に塩をすり込むとか……」
ラメリ「ううっ。聞いているだけでいたそーな……」
リオーズ「なにを言う。これはみんな俺の知っているフマクティがルナー兵に情報を吐かせるためにやったことだぞ。」
ラメリ「ゴッドブレードが落ちてくるわよっ!」
はらぺこジャック Hungry Jack
ルーン:「混沌」「調和」「植物」 飢えし大喰らい
リオーズ「はらぺこジャックは「大いなる夜」に生まれた生き物だ。おそらく「混沌の洪水」によって変異し堕落してしまった自然生物のひとつだろうと言われている。
はらぺこジャックは……」
ラメリ「はいはい、おにーさんおにーさん」
リオーズ「ん、なんだ?」
ラメリ「ほら、このあとのページを見てみそ。」(注:元記事では、このあとにはらぺこジャックのカルト・ライトアップがありました)
リオーズ「……ううむ。これでは語ることがないじゃないか。この他にというと……そうだな。
はらぺこジャックはドラゴン・パスにもかなりの数いるんじゃないかと俺は思っている(ご本尊を含めて)。未開の森(忌まわしの森とか)や岩の森の麓なんかには信者のコロニーがかなりの数あるかもしれないぞ」
ラメリ「(“ジャックの落とし子”のデータを見て)……げー、こんなのがドラゴン・パスのあちこちでうろうろしているわけ?」
リオーズ「いや、こいつは動けない。」
ラメリ「そういう問題じゃないっ!」
ウレイン Urain
ルーン:「無秩序」「風」「飢え」 邪悪な風
リオーズ「光と生命が世を去った暗黒の時代……」
ラメリ「おにーさーん」
リオーズ「だぁーっ! こんどはなんだ!」
ラメリ「こいつも、ほら。」(注:これもカルトライトアップがありました)
リオーズ「……わかりました。いいです。俺はもう帰って寝ます。」
ラメリ「わーっ、すねないでぇっ!
えーっと、そうだ。あたしはこの神様について聞いたことがないんだけど、教えてくれないかなあ?」
リオーズ「すねてなんかないぞ(ぐしぐし)。まあ、ウレインはグローランサ年代記に数回登場してるだけのマイナーな神様だからしかたがないなあ。
俺はウロックス(ストーム・ブル)と関係が深い混沌神というところに興味を覚えてるけど。同じ狂戦士の神だし。度をすぎた迷惑をかけるストーム・ブル信者は『ウレインに取り憑かれた』といって殺されることもあるらしいぞ」
ラメリ「えー? そりゃ口実をつけて厄介者を始末しただけでわ(笑)」
リオーズ「だが、殺すことを好みすぎる狂戦士が、自分でも知らないうちにウロックス(ブル)と思ってウレインを信仰していた、ということも実際あるらしい。」
ラメリ「風の混沌神ねえ。両方とも頭が雄牛だし、ブルとはなかなか面白い対決になりそう」
リオーズ「これは秘密だが、ウレインはウロックスの混沌面だという話もある。」
ラメリ「ブル信者に殺されるわよ。」
リオーズ「気をつけよう。グローランサ年代記では、アーグラスがルナー帝国に負けた時に「悪い雨」(Bad Rain)がドラゴン・パスを覆った、と言っている。このカルトは英雄戦争にむけて復活しつつあるのかもしれないな。
ドラゴン・パスでは忌まわしの森の近くの「死者の森」(トロウルパック付属地図参照)あたりにカルトが存在しているとの噂があるな」
ティラム Tyram
ルーン:「混沌」「天空/炎」 天空の恐怖
リオーズ「ティラムは天空の混沌神だ。混沌が世界に入り込んだとき、怪物の王の一柱が天空に上った。恐ろしい戦いののち怪物は撃退されたが、その痕跡はいまだスカイゴープや禍霊座(まがつびざ)という星座として見ることができる。」
ラメリ「次は天空の混沌神かあ。混沌も秩序だっているのね。」
リオーズ「うーん。実はティラムと呼ばれる神は、デーモンを集めて神知者が創りだしたものだと主張する学者もいるんだ。他にもゾラーク・ゾラーンが天空に攻め入るために使った焔だという説もあるが、トロウルにもほとんど信じられていない。」
ラメリ「それがホントなら、やっぱ神知者は悪い奴らよね。」
リオーズ「いや、まったく。たぶん『理論的に言って、風の混沌神はいるのに、他のエレメントの混沌神がいないのはおかしいじゃないか!』とかいって、自分たちで作り出してしまったんだろうな。こまったもんだ。」
ヴァカルタ Vakalta
ルーン:「混沌」「暗黒」 地獄の狩人
リオーズ「ヴァカルタは暗黒の混沌神だ。」
ラメリ「とすると、これも神知者がつくった神?」
リオーズ「と、いう説もある。地界に攻め入ったが、死せるイェルムと暗黒の神々に足止めされていた。信者はヴァカルタを混沌に歪められた醜悪なトロウルとして描く。祈祷師によって崇拝されていることが多い。」
ラメリ「ふーむ。すると水の混沌神とか、大地の混沌神とか、月の混沌神とかもいるのかな?」
リオーズ「月の混沌神は“赤の女神”だろ。
まあ、カルトとして成立しているどうかはともかく、祈祷師が崇拝していても不思議ではないな。」
シダーナ Sidana
ルーン:「混沌」「豊穣」、黒き山羊
リオーズ「セッドは自らの子である“悪魔”ワクボスに屈服し、彼と子をなして世界の多くの混沌の恐怖の母親となった。そのなかで最初に生まれたのが“黒き山羊”シダーナ。シダーナは近親相姦の女神だとされている」
ラメリ「げげーっ」
リオーズ「だから、子孫ができなくなって信者はすぐいなくなってしまうらしい。オーランス社会で山羊を不浄な動物だとしているのもこの女神のせいだろう」
ラメリ「同じ山羊だけど、セッドとは別の神?」
リオーズ「下位カルトに近いらしいが、独立しても崇められているようだ。だからブルーでなくても、人間でもシダーナを崇拝……」
ラメリ「イヤな方向に話をもっていくなぁー!」
マグラ Magra
ルーン:「人」、ハーピィの祖
リオーズ「マグラはハーピィの祖だ。ハーピィやその神話についてはよく知られていないが、彼らの起源は獣人であると考えられている。
一説では、ハーピィはドラゴン・パスに住んでいた“白鳥の民”という獣人が起源だったといわれている」
ラメリ「ハーピィ……というと、あの男をさらっていって子供を産むやつ?」
リオーズ「そうそう。別にトロウルやブルーやバブーンでもいいんだが、人間が一番好みらしい。さらわれた男は交歓の儀式の後喰われてしまうらしいな。
ジェナーテラ大陸全土に分布しているが、山岳地や荒れ地に住むことが多い。あとブルーみたいな病気持ち」
ラメリ「あまりお近づきになりたくないわねー(あたしは関係ないけど)」
リオーズ「マグラは特殊神性呪文として《交歓の儀式》 Mating Ritual というのが追加される他は、ダーか・ファールとだいたい似たカルトになっている。同じ祖霊崇拝だから当然だけどな」
ラメリ「ねえ、なんか……こんなカルトばっかり続いていない?」
リオーズ「グローランサは性に関係するカルトが多いからなあ……」
コルボグ Korbog
ルーン:「混沌」「死」、混沌の狩人
リオーズ「狩人の神々の一柱だ。バゴッグの息子の一人で、スコーピオンマンやブルーなどの間で信仰されている。混沌だから《穏やかな死》は教えていないが、〈屠殺〉技能は教えている。あとはだいたい他の狩人の神と同じ。」
ラメリ「へえ。スコーピオンマンってのはバゴッグだけしか信仰していないわけじゃないんだ」
リオーズ「人口の7割以上はバゴッグ信仰だけど、8〜10%はコルボグを崇拝しているらしいぞ。あとは、イーカズやマリア、サン(サナター)、混沌のデーモンなんかも信仰されている」
ラメリ「……ってことはスコーピオンマンも《命中》かけてくるのかぁ。遠距離戦でも気をつけないとなぁ」
レムール Lemure
ルーン:「無秩序」「暗黒」「幻影」、激情の源
リオーズ「レムールは、激情精霊の親玉といった神だ。ほとんどカルトは存在しないが、邪悪な祈祷師の中にはこの神と接触して激情精霊を操るものもいるらしい。あと激情精霊にとりつかれた者が無理やり崇拝するはめになっていることもある。カルトは《(激情)媒介》を教えている。激情精霊を標的にぶつけて攻撃させ、憑依させる呪文だ」
ラメリ「そーすると旦那、“恋する相手に恋情精霊をぶつけて無理やり自分を好きにする”とゆーのをやる祈祷師が出てくるにちがいない(笑)」
リオーズ「混沌にそまってまでやる価値はないと思うけどな」
ラメリ「ちっちっちっ、あまーい。恋は盲目、手段を選ばないものなの」
リオーズ「そんなものか?? まあ“らぶこめ”な話をやるならどうぞ。……ところで恋情精霊は眠っている相手にしか効果はないぞ」
ラメリ「(ルールを読んで)あ、ほんとだ。すると、寝室まで忍び込むのが大変か(笑)」
クリムゾン・バット Crimson Bat
ルーン:「混沌」「獣」「飢え」「月」、赤の女神の乗騎
ラメリ「RPGマガジン誌で『クリムゾン・バットに手はないんだぁ!』と翻訳者の人が叫んでいたけど、「古の秘密」のイラストには手はないよ?」
リオーズ「手のように見えるけど、あれは足だな。……まあそれはともかく。
サンディ氏はRQ2版で存在していた同盟精霊のリトル・バットは3版ではいなくなったと言っているが、シナリオネタになるんで、司祭に与えられる同盟精霊としてもいいとおもう。
リトルバットはINT 7 と POW 3D6+6、一つの身体部位にAP2とHP 2D3 ポイントもっている。攻撃方法は「精霊戦闘」と「噛み付き」(FPを1D3ポイント吸収、FPが0になるとSTRを吸収)。一週間に一度精霊戦闘をおこなって、犠牲者のMPを0にしてPOWを吸収しなくてはならない。破壊されても満月の日には復活するが、もしバットが内世界から消えれば一緒に消滅してしまい、バットが復活してももう戻ってくることはない」
ラメリ「以上、Stephen Martin 氏のファンジン“英知の書”(Book of Drastic Resolutions)を参考にしましたぁ」
リオーズ「このファンジンはGM必携だな」
ラメリ「うん。そうそう、“英知の書”はグローランサにも存在するんだよね。(Lords of Terror 4ページ) たしか〈啓発〉技能が上がったり、《切開》とかの混沌系魔道呪文が覚えられたりする、グローランサのネクロノミコンといわれる(?)本なんだけど……はっ、まさか!」
リオーズ「持ってないって。残念ながら」
ラメリ「残念ながら?」
リオーズ「……はっ。いや、冗談だ。そんな暗黒書が欲しいわけないじゃないか。はっはっはっ。
えー、“英知の書”はナイサロールの帝国で書かれ、帝国の崩壊時に失われたはずだったんだ。だがジョンスタウンのランカー・マイ信者、サロナール・タマスキルが半世紀ぐらい前に原本を発見して翻訳し、闇で出回ったという話だな。サーターでは焚書扱いで、ここの図書館にも残っていない。うーん、つくづく残念……」
ラメリ「(あ、あぶない奴……)」
※
ラメリ「……というわけで、ちょーマイナーな混沌カルト紹介、いかがでしたか?」
リオーズ「ほんとはまだいろいろな混沌神がいるんだぞ。“静寂なる”ガークとか“傷ついた神”とかワゾーとかアリンソールとかドゥルグカールとかジョクバージとかジラクタルとかザーマールクとかフマクトとか……」
ラメリ「わー。もおいいです、もおいい。
え?……フマクト?」
リオーズ「という、フマクトと同名のデーモン。
《霊魂放逐》と《亡者滅環》が使えないかわりに《ファンブル》という呪文を提供している。MP抵抗ロールにうち勝つと、相手は手がすべって、適当なファンブル表を振ることになる。1ポイント、遠隔、残照、複合不可、再使用可。
前述の『Book of Drastic Resolutions』の Lords of Terror エラッタに載ってた。」
ラメリ「剣士ブルーが崇拝しているフマクトってのはデーモンだったのか……」
リオーズ「まあ死ってのは混沌生物にとっても重要なものだから、“死”が崇拝されていても不思議はないけどな」
ラメリ「あんた、フマクト信者に決闘を申し込まれないようにね。
ま、ともかく。読者のみなさんのプレイには役立たない話だったかもしれないけど、なかなか興味深かったでしょ?」
リオーズ「ほんとはヴィーヴァモートに関する面白い文献を見つけたんで、そっちからも紹介したかったんだが。今回は時間がなかったな」
ラメリ「ま、それは次回があったらお楽しみということで……
んじゃ、機会があったら、また会いましょ!」
リオーズ「じゃな!」