新ルーンクエスト(RQG)では、旧版の1621年から時代が進み、英雄戦争が開幕した後になっています。
今までは来るべき背景設定に過ぎなかった「長く予言されてきた世界の終りの英雄戦争」がいよいよ始まったわけです。
ではこの5年間にどのような事件があり、冒険の舞台であるドラゴン・パス地方にはどのような変化があったのでしょうか?
ところで今は「いつ」か?
新ルーンクエストではキャラクターを作成した時点でのデフォルト設定では「1625年」であるとされています。
しかしながら、キャラクター作成時点に振る経歴表では、1625年の嵐の季(最終季)に起こったであろう事件についての結果について反映されるようになっています。したがって、キャラクター作成終了時点では早くても「1625年終わりの聖祝期」であることになります。
個人的なおススメですが、単発シナリオをやるなどの時は、「冒険の舞台」としては、1626年の初頭(火の季)におこる「女王たちの戦い」が終わり、カリル・スターブロウが戦死してサーター王が空位になった時期を舞台にするのがよいのではないかと思います。
この時期、ルナー帝国・ターシュ王国軍はサーターを撤退しており(拠点に残っている帝国軍はいる)、さらにサーター王国の正統後継者が不在となっていることで、各地は非常に不安定な情勢となっています。ゆえに逆に冒険の舞台としてはうってつけだからです。製作陣は西部開拓時代のような時代だと述べています。
以下は、その1626年火の季以降のドラゴン・パス地方の情勢です。
※旧版ルーンクエスト時代(1621年時点)でのドラゴン・パスの解説は、ぴろき氏のサイトが詳しいので、まずそちらをぜひご参照ください。
各地の情勢
サーター王国
1625年に帝国の支配から脱したのもつかの間、1626年火の季の「女王たちの戦い」で公王カリル・スターブロウが戦死し、有力部族の王たちは次の公王を選ぶことができませんでした。サーターからの正統な血統をもつ王族はほぼルナー帝国により暗殺し尽くされ、カリル・スターブロウは最後の王家の血統をもつ者として知られていたからです。
現在では、サーターは統一前の部族の分裂した状態に戻りつつあります。幸いにも隣国は内乱に陥っていますが、いずれ再統一されたターシュ王国に再征服されるのは時間の問題かもしれません。
「大いなる冬」の傷跡
1621年から1622年にかけて起こった「大いなる冬」は、2年にわたり冬がつづき、オーランスとアーナールダの魔術も使えなかった大災厄でした。人口の1割から3割が死亡する氏族もあったほどの厳しさでした。
こうした中、生き残るためにオーランスを棄教し、七母神へ転向するものが続出しました。
1625年、サーターは解放されましたが、氏族内ではこの転向者への対応問題が残されました。氏族の者を殺すのは「同族殺し」で禁止されており、また転向者が数割を占める氏族もあったため、単純な解決法はありませんでした。しかしながら以下のような対応がとられることが多かったようです。
- (転向者の数が少なければ)ルナー教に転んだ者を無法者とし追放する。
- 転向者を氏族から切り離し、独立した氏族を新たに創立させる。ルナー系の氏族がいくつも生まれます。
- 転向者が都市などへ向かい、軋轢を避ける。こうして都市では七母神信者が増大します。
ファープレイス(サーター北部)
1625年の「真竜の目覚め」事件で十数年にわたり権勢を誇ってきた“鉄拳”ハ―ヴァーが死亡し、ルナー帝国による暫定的な支配が続いているようです。なお、アローン市(アマド、バッハド、トレス部族の中心地)はパヴィスのアーグラス王に忠誠を誓っています。
ジョンスタウン同盟
1623年以降、カリルと結んで反乱を主導していたクルブレア族の王“威風堂々の”ラナルフは「女王たちの戦い」でカリルと同様に戦死しました。シンシナ部族は伝統的に人狼テルモリと対立しており、これと同盟を結んでいたカリルに不信を抱いていたため、ひそかに女王の戦死に胸をなでおろす者もいます。
一方、タティウス亡きあと残存軍をとりまとめてボールドホームで抗戦したジョムズ・ウルフ公はなんとかウルフスタンドへ撤退し、再起をはかっている模様です。
テルモリの荒野
人狼テルモリ族は1620年のルナー帝国・シンシナ族軍との戦争で大きなダメージを受けています。1625年に僭王テマーティンが暗殺されたことでサーター王家とのつながりも無くなり、周辺部族との軋轢は増大しています。
スネーク・パイプホロウ
「真竜の目覚め」事件の後、混沌が活性化していることが報告されています。(13th Age Glorantha では、この混沌との戦いにフォーカスをあてています)
コリマー部族
部族の王ブラックマー王が「真竜の目覚め」事件で死亡し、追放されていた“バリスタの”レイカ女王が帰還して女王となりました。レイカ女王は「女王たちの戦い」ではカリル戦死後に軍を率いてルナー軍を敗走させたことで名を挙げています。
ホワイトウォール
白い巨岩の上に築かれた要塞。1621年の帝国との攻防戦で破壊され、現在では廃墟となっています。宗教的な聖地ではありますが、ヘンドレイキ族の都市としての政治的な重要性は失われました。
ラーンステイの足跡
混沌の活性化にともない、スコーピオンマンの女王「ジャブの女王」に統治される女王国が誕生しています。
ターシュ王国
1610年にモイラデス王が死に(一説には「解脱し」)、子のファランドロスが後を継ぎましたが、彼は叔父のファザールの名声に脅威を覚えていました。1625年の「真竜の目覚め」事件に乗じて王はファザールの支持勢力の一部貴族層を粛正して権勢を切り崩そうとしましたが、ファザールは素早く撤退しそれを阻みました。現在はファザールはダンストップ市を中心としたコルドロス島で半ば独立した勢力となっています。
ファランドロス派、ファザール派の両派はドラゴン・パスの各勢力を取り込もうと画策しています。たとえば、1625年にはファザールは「冬の峰」の揺るがすものの寺院の王として次男の“ダンストップの”アンスタッドを送りこもうとしてます(これは失敗したようですが)。
ファザール派には帝国の旧サーター支配機構の一員も加わっています(ゴルディウス・シルベリウスなど)。一方のファランドロス派は赤の皇帝と帝国の公式の支援を受けています。
ファザール家の子ら
詩人オンジュール
ファザールの長男。1622年の忌まわしの森からのタスクライダーによるターシュ侵攻の際、バグノット郊外で半トロウル王を一騎打ちで殺したことで大きな名声を得た。この事件でファランドロス王はファザール家への脅威を覚えるようになったという。
ダンストップのアンスタッド
ファザールの次男。年若くして赤の女神に入信したが、1625年に“雷鳴轟かす”オーランスへ二重入信をして周囲を驚かせた。多くの女祭たちを誘惑し、複数の女性と結婚したことで有名。のちにアーグラスの友となる。
流民国(古ターシュ)
ターシュ王国の内乱は古ターシュにも変動をあたえました。揺るがすものの寺院は1625年に“冬の峰の”アンステイを流民国の氏族の王に選出しています。(おそらくファザール派の介入を防ぐため)
悲願であるターシュ王国の奪還にむけ、彼らも政治的な策動を始める可能性は高いと思われます。
アンステイ王
カリル・スターブロウとともに「真竜の目覚め」を呼び起こす儀式で踊ったと言われる。
グレイズランド
ケロ・フィンの大女祭でありドラゴン・パスの君主権を持つ「羽馬の女王」が騎馬遊牧民の諸部族の王の上に君臨するという政治体制をとっています。1602年以来、親ルナー派の羽馬の女王が代々選出されていましたが、1625年に「真竜の目覚め」で前女王が死去したため、インカーネが羽馬の女王となり、その政治姿勢は中立となり、ターシュ・サーター双方に干渉を始めました。
1625年にはターシュ王国への略奪が行われています(この軍のなかには羽馬の女王の姿はありませんでしたが)。
インカーネ女王
1605年生まれの21才。ドラゴン・パス王でもあったターシュ前王モイラデスと、羽馬の女王「涙知らずの君」ヴィルカラ・トールの間の娘。よって、現ターシュ王ファランドロスの異母妹にあたる。
プラックス
1610年に「ムーンブロスの戦い」で騎獣遊牧民が敗北してより、パヴィスを中心にルナー帝国に支配されてきましたが、1624年にアーグラスが「ジャルドンの憩い」で太古の英雄ジャルドンを召喚して遊牧民の部族を糾合し、総督ハルシオン・ヴァル・エンコースを駆逐してパヴィスを解放しました。1625年、アーグラスは帝国の拝領地を攻め、太陽領の伯爵に自派のベルヴァーニを据えるとドラゴン・パスへ向かいましたが、タティウスの放った魔物に敗退し、パヴィスへ撤退しています。現在アーグラスは新たな行動に備え、自軍の力を蓄えています。
アーグラスの仲間たち
エスロリア
1616年の神王ベリンターの消失より10年にわたり戦乱が続いています。1622年に親ルナー派の女王を打倒してノチェットの女王となったサマスティナは、帝国の攻囲戦を耐え抜き、翌年には帝国の同盟として来襲したグレイズランドの羽馬の女王の騎馬軍を破り敗死させました。1624年、女王は海賊ハレックとアーグラスと同盟して「ペンネル浅瀬の戦い」で帝国を破り、西方のソランティ族の王グレイメインを打倒しました。現在の女王の最大の悩みの種は、かつての同盟者であった“狂戦士”ハレック率いる「狼の海賊」による沿岸部の略奪です。
おてんば女王サマスティナ
サマスティナはウェブコミック「Prince of Sarter」のエスロリアの章で登場した少女でした。コミックではルナー派の女王と対立し暗殺を避けるために旅立つところまでが描かれていましたが、HeroQuest Glorantha ではルール解説の「サマスティナのサガ」として焔の魔女クラグスパイダーとの交渉、オーロックス丘の戦いへの参戦、ノチェット攻囲戦などが描かれていました。主な能力は〈野望:女王になりたい〉〈欠点/尊大〉〈欠点/かんしゃく〉。
年表
1621年
- プラックス/海の季:「巨人のゆりかご」がゆりかご河を下って海へと去る。(ゆりかご事件)
- ドラゴン・パス/嵐の季:2年間の多大な犠牲をはらった攻囲戦の末、ついにホワイトウォール聖砦がルナー帝国軍に失陥する。
- 全域:オーランスとアーナールダの死が公式に宣言され、「大いなる冬」がドラゴン・パス地方と聖王国、プラックス地方に到来する。ブライアン王は「新たな大暗黒の到来」として各地に檄を飛ばす。赤の皇帝は1年間の祝祭を宣言。
- ドラゴン・パス/聖祝期:赤の皇帝が“博識”ファザールに替えて“聡明なる”タティウスを「ドラゴン・パス ルナー総督将軍」に任命する。
1623年
1624年
- 全域/海の季:新しい星「舟星」が天に昇る。破滅と変化の予兆とされており、古の種族をはじめとして各勢力が英雄戦争計画の推進を早める。
- 全域:舟星の昇天に伴い「海洋の大閉鎖」が終わる。(このことは暫くの間気づかれなかった)
- エスロリア:狂戦士ハレックとアーグラス、狼の海賊団が聖王国に再来。サマスティナ女王とブロイアン王と同盟を結ぶ。
- エスロリア/海の季:「ペンネル浅瀬の戦い」。ルナー軍と同盟軍の会戦。ルナー軍は敗北し、オーランスが完全に解放される。このとき消え去っていたオーランスの輪の星座が現れたが、新しく3つの星が加わっていた。
- プラックス:アーグラスがプラックスの辺土で黄金の歯のジャルドンを召喚することに成功し、予言された「白い雄牛」であるとされる。
- 聖王国/闇の季:ハレックとブロイアン王が聖王国の廃都「驚異の都」を掠奪する。
- サーター:傀儡の王テマーティンがヒューマクト信徒に暗殺される。
1625年
- プラックス/海の季:白い雄牛の結社を率いたアーグラスがパヴィスを解放、「パヴィス王」を名乗る。
- 聖王国:ブロイアン王が殺される。
- サーター/火の季:サーターの新月の寺院へ侵攻しようとしたアーグラス軍はルナーの魔に大敗北し、パヴィスへ撤退する。アーグラスは体制の再構築で年を費やす。
- サーター/地の季:「真竜の目覚め」。昇月の寺院の建立儀式にカリル・スターブロウ率いるヒーロークエスターたちが介入、真のドラゴンを召喚し、その場にいた帝国属領地の貴族、軍団、司祭たち、親ルナー部族の王たちが貪り食われる。数分にして属領総督をはじめとしたルナー支配者層が全滅した。その後、真のドラゴン(褐色の龍)は天に昇り、中空の赤の月に向かった。赤の皇帝の多大な犠牲を払った儀式によりドラゴンは押し返されたが、世界各地の人々がこれを目撃した。
- 全域:「英雄戦争」始まる。
- サーター:カリル・スターブロウがボールドホームを解放し、サーターの公王を名乗る。
- サーター:サーター自由軍とファザールに率いられたターシュ軍の戦い(「デンジャーフォードの戦い」)。
- ターシュ:ファランドロス王が叔父のファザール支持者を粛正しようとして失敗。サーターから引き払ったファザールはコルドロス島を支配し、王の命令を無視し半ば独立する。ターシュ内乱始まる。
- ターシュ:揺るがすものの寺院で新しい「冬の峰の王」アンスティが選ばれる。
- ルナー帝国:アガー王国、タラスター地方、ヴァンチ王国、イムサー王国、ホーレイ女王国で反乱。
- サーター/聖祝期:カリル公王が「光帰りし者たちの小巡礼行」のヒーロークエストを試みるが、帝国公式聖英雄ジャ・イールの介入により失敗。大きな被害を受ける。破滅の予兆が読まれる。
1626年
- サーター/火の季:「女王たちの戦い」。数に勝るターシュ王国軍(ファージェンティテス)とサーター自由軍の戦い。公王カリル、ラナルフ王などが敗死する多大な被害を受けるも、レイカ女王の活躍でターシュ軍を撤退に持ち込む。しかし諸部族は後継者の公王を決められず、それぞれの所領に戻っていった。