ルーンクエスト情報局

新ルーンクエストの情報です。

【レビュー】新ルーンクエスト RuneQuest Roleplay in Glorantha プレビュー版

RuneQuest : Roleplaying in Glorantha (以下、「ルーンクエスト」、「RQG」)は、2017年末(PDF版)~2018年始め(物理本)の発売が予定されているTRPGです。
今回、僥倖にも GenCon に行かれた鮎方さんにお願いして、限定100部の配布である「新ルーンクエスト」のプレビュー版を手に入れることができましたので、簡単にレビューをしたいと思います。


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なお、プレビュー版は、完成原稿(ただしまだ手直しはあるそうです)を、イラストや表など無しでそのまま流し込んだもので、製品版では変更の可能性があるとのことですのでご注意ください。



はじめに

ルーンクエストは、過去にケイオシアム社より発売されていた「ルーンクエスト2版」(旧版)の正統後継者です。システム的には「ルーンクエスト3版」(日本語版が翻訳されていた版)を取り込みつつ、複雑化しすぎた面があった3版よりとっつきやすくなっています(例:移動関係、ENC、疲労ルールなど)。基本的なルール部分は2版を踏襲しているため、「2.5版」と言うスタッフもいるようです(なお、筆者やほかの方の感想では、「3.5版」が正しいのではないかと思います)


一方でグレッグ氏の過去作「King Arthur Pedragon」より「Passion」(情熱)のルールや季節ごとの冒険という運用方法、名声(Reputation)などの要素を取り入れたことで、キャンペーンとして「キャラクターの歴史」を遊ぶことができる仕掛けになっているようです。時代背景としては激動の「英雄戦争」時代に突入した1627年が舞台のスタートとなっていますので、英雄戦争時代の中でのPCの冒険という面が強調されるのかと思われます。


また、大きな変更として、今までのルーンクエストでは背景設定のフレーバー程度であった「ルーン」の扱いがルール化され、各所で重要な役割を果たすことになったことがあります。こちらについては後程詳述します。


コアルールであるRQGでは、背景世界のグローランサについての情報は控えめに提供されています。またクリーチャーのデータなどは同時発売が予定されている「Glorantha Bestiary」(グローランサ動物誌)に収録されるため、本ルールには含まれていません。


内容は大まかに以下となります。

●キャラクター作成……約1/3

  • 作成ルール、プレロールドキャラ6名、出身地解説含む

●ゲームシステム……約1/5

  • 技能、戦闘、ルーン、Passion、名声

●魔術……約1/3

  • 精霊魔術、カルト、ルーン魔術、祈祷師と精霊界、精霊、魔道

●装備……10ページ程度
●幕間の冒険(成長)……10ページ程度
●付録


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キャラクター作成

日本語版である3版のキャラクター作成では、文化による生まれ表を振り、生まれ技能に経験年数を掛けて初期技能を決定していました。このため「20才前後の若いキャラクターは経験を積んだおっさんに勝てない」という構造が生まれ、ルーンクエストトラベラーと並び「おっさんのゲーム」と呼ばれる原因となっていました。


ルーンクエストでは、キャラクターは主に5つのファクターにより技能を決定します。


(1)生まれと出身家族の歴史による技能・パッション・ルーン等の獲得。
(2)能力値の決定による副能力値・技能修正の決定。
(3)職業選択による技能獲得と装備品の決定。
(4)カルト選択による技能・魔術の獲得。
(5)プレイヤーの自由な技能割り振り。


キャラクター作成後の強さは、最高技能が90%に届くか届かないかの、「強力な入信者」レベルになります。なお、作成終了時の年齢は21歳です(より若年、もしくはより歳をとったキャラの作成は可能)。RQGはおっさんのゲームではなくなりました。
キャラクターを作るのに必要な時間としては30分~1時間程度と思われます。

能力値について

ベーシックロールプレイシステムであるルーンクエストは、クトゥルフでおなじみの能力値を持ちます。(STR、CON、SIZ、DEX、INT、POW、CHA) おなじみと言いながら APP が CHA(Charisma、カリスマ)に変わっていますが、CHAは容姿ではなく人間的な魅力を表す能力値です(しかし宝飾品を身に着けることで上がったりするのでわりとあいまいです)。精霊を従わせるのに使ったりもします。
副能力値としては、マジックポイント、ヒットポイント(トータルHPと部位別HP)、ルーンポイント、治癒レート(自然治癒力に関係)、db(ダメージボーナス)、精霊戦闘ダメージ、最大ENC(持てる装備の制限)、ストライクランク(DEX SRとSIZ SR)、そして「ルーン」と「Passion」(情熱)があります。

生まれと出身家族の歴史


まずは、おおまかな出身地を決めた後、家族(祖父母、父母)が歴史イベントのなかでどのような目にあったかをダイスを振りながら決めていきます。
ダイスに翻弄されるのが楽しいルールになっています。


実例として、alley-cats さんがキャラクター作成部分の解説を書かれていますので参照いただくとよいでしょう。(「ノチェット便り:新ルーンクエスト(RQG)のキャラクター作成」) 
選べる出身地は「サーター王国」「エスロリア」「グレイズランド」「プラックス(さらに5大部族から選択)」「ルナー・ターシュ」「古ターシュ」になっています。出身地を選ぶと、文化による技能ボーナスをいくつかと、文化武器を1つ選ぶことができます。オプションとして、さらに細かく出身地を決めてボーナスをもらうこともできます。(例:エスロリアのノチェット市の出身であれば〈取引き〉Bargain に+10%、〈交易語会話〉に+10%がもらえます) これは地誌(ドラゴン・パス地方)の方に書かれています。

ルーン


ルーンクエストでは、キャラクターはルーンの力を所持しています。これをルーン・アフィニティ(親和力)と呼びます。各ルーンの力は技能と同じ % で表現します。カルトのルーン魔術を使うのに使ったりしますので、高いレートのルーンがカルトのルーンと一致していることが重要になります(したがって、ここでカルトを決めることになります) 出身地により、ルーンにボーナスがあります。(サーターでは嵐に+10%、エスロリアでは大地に+10%など) 最も高いエレメンタルルーン、2番目に高いエレメンタルルーンについては能力値にボーナスを加えます。(例えば「嵐」のルーンが一番高いPCはSTRまたはCHAを+2できる)


ルーンは魔術を使うのに使うほか、性格として使ったり、ルーンに関連する技能を増強(成功率を高める)ために使ったりもできます。増強できるのはルーンに関連する技能のみです。

情熱(パッション)


パッションはある対象への「憎悪」「名誉」「忠誠」「(神への)帰依」「恐怖」「愛」などです。使用用途はルーンと似ていますが、これはプレイヤー側から使用を提案する以外に、高い情熱については場面によりGM側から使用するよう指示されることがある点が違います。……PCがプレイヤーの意図と裏腹に行動することがあるということです。

職業


ルーンクエストでは、職業を自由に選ぶことができます(ダイスで振ることもできますが)。旧版ではダイスで振ると農民ばかりというネタがありましたが、それは解消されました。選択できる職業は 祈祷師助手、野盗、戦車騎手、工芸家、芸人、農民、漁師、癒し手、牧夫、狩人、商人、貴族、哲学者、司祭、書記、盗賊、戦士(4タイプから選択)です。出身地によっては選択できないものもあります。
職業では収入、生活水準、好まれるカルトや情熱、身代金、初期装備(防具など)が決まります。武器は選んだ社会武器は所有しています。わりと格差がありますが自由選択なので大丈夫でしょう……

カルト


カルトを決定します。カルトによって「技能」(ボーナス)、「ルーン魔術」(一般ルーン呪文全部と特殊ルーン呪文から3つ選ぶ)、「精霊魔術」(カルトが教えているものから5つ選ぶ)もしくは「魔道魔術」(ごく一部のカルトのみ。精霊魔術と併用はできない)、「情熱」(カルトで好まれるもの)を取得します。


選択できるカルトは、コアルールでは20個。基本的にはプラックスとオーランスと大地の神々ですが、アーガン・アーガー(地表の闇の神)、七母神(赤の女神の使徒)なども含まれています。出身地のカルトはほぼ網羅していますが、なぜアーガン・アーガーがはいってヘラーが入らなかったんだ、とか細かい文句は出そうですね(なお同時発売の「動物誌」の方にも非人間種族のカルトはいくつか収録されているようです)。
グレイズランドの太陽神ユ・カルグザントは呼び名としてはイェルムになっていますが、同じ神の別名だということでしょうか……


ルーン魔術を使うには「ルーンポイント」を消費します。これはPOWを捧げてつくるPOWプールのようなもの。たとえば《神剣》True Sword は1ポイント呪文で、使用するとルーンポイントから1ポイントを消費。旧版では入信者はルーン呪文を使い捨てで習得しましたが、新版では入信者でもルーン呪文を回復させて使うことができます。ただしルーンポイントはMPのようにすぐには回復せず、基本的には1季節に1回のカルトの聖日の礼拝儀式で回復します。
キャラ作成時のルーンポイントは3、習得しているルーン呪文は「一般ルーン呪文すべて+特殊ルーン呪文3」ですが、POWに余裕があればPOWを捧げてルーンポイントを増やしておく(習得している特殊ルーン呪文も増える)方が戦略に幅が出るかと思います。

技能と判定ルール


技能は過去の版と同じくいくつかの技能分野に分類されます。新しい技能もあり、2版、3版とも異なるコンセプトで再構築されているようです。単純に戦闘や冒険に使うものだけでなく、歴史キャンペーンが主眼におかれるためか、戦争で使う技能だとか、経営のための技能などが増えています。人間関係の技能も充実しており、たとえば〈洞察〉Insight の技能などはクトゥルフの〈心理学〉のように使えて使い勝手が良さそうです(ただし異種族には別技能として習得する必要あるのでエルフの考えていることは分かりません)。〈礼拝〉Worship は3版では呪文でしたが魔術技能の一つとして整理され、ルールも整備され分かりやすくなりました。


新しい技能の使い方として技能で技能を増強(Augument)することができます。たとえば礼拝儀式を歌や踊りの技能で成功率を上げるなど。何の技能で増強できる技能は決まっていませんが、GMの許可を得る必要があります。ルーンや情熱との併用はできません。

戦闘ルール


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ルールとしては「ルーンクエスト2版」のルールを元にしています。2版のルール解説は、やはり alley-cats さんが書かれていますのでご参照ください。(ノチェット便り: RQ2 紹介 - 第06回 戦闘 (戦闘ラウンドとストライクランク) から数回分) ただしDEFによる攻撃率の減少はなく、かわりに〈回避〉が3版から取り入れられている、などの違いがあります。


旧翻訳版である3版との大きな違いは、移動と戦闘がフェイズで分割されていることです。
3版はストライクランクの中に移動をもちこんだために移動しながらの攻撃がかなり込み入ったことになったのですが、2版/新版は「まず接敵していないものの移動を解決する」、「次に接敵しているものをストライクランクで管理する」とフェイズ分けすることで単純化されています。呪文の投射も(ストライクランク計算で翌ラウンド持ち越しの例外などはありますが)基本は1ラウンドに1回のみしか投射できないと単純です。
また、ストライクランクも1ラウンド10までから12までになっている(2版に戻っている)ので、ラウンド持ち越しも少し減る感じです。


また、攻撃と受けのルールですが、プレビュー版では「サマリに書いてある戦闘ルールと本文のルールが微妙に違う」というエラーがあり(;^ω^)、どちらが正しいかわからない部分があるため詳細は解説しませんが、とりあえず武器は2版と同じくポキポキ折れそうです。3版ではあまり使わなかった精霊呪文の《修復(リペア)》が必須になるかもしれません(あとは騎獣に大量に武器を持ち歩くか)。


なお、疲労のルールはなくなっているようです。

魔術


魔術は「精霊魔術」「ルーン魔術」「魔道」の3体系のルールが収録されています。正直言うと「魔道」はランカー・マイとルナー魔術師しか使えないので、通常のルール運用からは外してもかまわないでしょう。今後「黒馬領」などが解説されれば幅が広がるるようになるかもしれませんが……。通常の「ルーンカルト」が使う精霊魔術(別名バトルマジック)とルーン魔術のルールを把握すればよいでしょう。精霊使いの祈祷師のルール、精霊カルトのルールなども収録されていますが、これも当初は考えなくてよいと思います。


カルトでは精霊魔術を半額で教えていますが、カルト以外からも精霊魔術を教わることは可能です。ただし禁止されている魔術もあります。(イェルマリオの《火剣》など)


呪付魔術も簡単に解説されていますので、マジックアイテムの作成も可能です。
なおヒーロークエストについては、RQGコアルールには含まれていません。

カルト


カルトの位階は「平信者」「入信者」「ルーンマスター」に分けられます。平信者は通常はPCとしては使いません。通常のキャラ作成では入信者からスタートします。
入信者は前述のとおり、ルーン魔術を使うことができます。
ルーンマスターは「ルーン司祭」と「ルーン王」、「神巫」(God Talker)の3種にわけられます。God Talker は初出ですが、共同体への義務の薄い司祭、3版でいう「侍祭」に近い地位です。ルーンマスターはPOW獲得ロールにボーナスがあったり、ルーンポイントが礼拝で全回復したり、神性介入ができたり同盟精霊ができたりといった特典があります。


掲載されているカルトで使える呪文は、わりと3版どおりだったり(例:イェルマリオ。《猫目》と《陽光》しかねえ)、大きく変わっていたり(アーナールダ。ものすごい大量の呪文持ってる)、いろいろです。3版ではあまり使われなかったエレメンタル(大/中/小サイズでカルトにより使えるサイズが違う)を使うカルトが多くなっています。友好カルトからの呪文融通も大きくなっており(入信者でも一回限り制限がない)、さまざまな呪文が選択可能になっています。

成長ルール


成長は「経験チェック」「訓練」「研究」でおこなわれます。


経験チェックはストレス下でなされたルーン、技能、パッションなどの成功につき、一季節の終わりにまとめてチェックをおこないます。つまり、公式ルールでは一季節に何回冒険をしてもチェックは1回のみです。
また、同じタイミングで職業とカルトの技能から4つを選び経験チェックをおこなうことができます(冒険に出ていなくても)。


訓練はルーンや技能が高い教師(通常はNPC)がいる場合にのみ行え、一季節の終わりに技能またはルーンが上昇します。教師にはもちろん謝礼を支払う必要があります(場合によっては師弟関係の情熱をとる必要も?)。
研究は技能を一人で研究します。一季節には1つの技能もしくはルーンのみ訓練が可能です。訓練によって経験チェックと同じ成長(ただし成長幅は低い)がおこなえます。


能力値のうち、POWは魔術を使ったり精霊戦闘をおこなうことでPOW獲得ロールを一季節に一回おこなうことができます。礼拝儀式の統率者(通常はルーンマスター)は礼拝儀式によってもPOW獲得ロールを得られます。大聖日や聖祝期の礼拝は、礼拝参加者全員がPOW獲得ロールを得ます。
他の能力値も訓練や研究によって上昇させることができます(ただし二季節かかります)。


名声(Reputation)は特殊な技能で、何かPCがシナリオで偉業?をなしとげると上がります。これは「悪名」も含みます。悪いことをしてもガンガン上がっていきます。初対面のNPCなどが判定して「あの〇〇で有名な……」「あの悪名高い……」といった使い方がされます。また、名声で技能を増強することも可能です。

聖祝期


聖祝期は一年の終わりにあり、世界の再生を祝って世界中で祭儀がおこなわれる二週間です。ゲーム的にはこの期間に翌年の出来事をダイスロールで決めます。
収穫が豊作だったか凶作だったかにより、職業による収入が変動します。
また、この期間に加齢処理や翌年の家族の出来事ロールが行われます。(子供が生まれたり、結婚したり、家族が死んだり、……)

まとめ


基本的な戦闘システムは大きく変わっていません(たしかに2.5版、あるいは3.5版といった風情)が、年代記的なキャンペーンをおこなえるようなチューニングが行われていることがわかります。
HeroWars や HeroQuest が共同体との関係をロールプレイする方向に進んだのとはまた別のアプローチ、「家族」との関係をロールプレイする方向に来たように思えます。
また、いろいろな物事を決めるのにダイスを振ることが多く、ダイスに運命を翻弄されるのが楽しいです。


グローランサについては詳細には解説されていませんが、ルールの端々からそのおかしな世界観が垣間見えるというかたちになっています。
このぐらいに抑えた方が、わかりやすさという点では正解かと思われます。


戦闘ルールが2版をベースにしているということで「目新しさがないのでは?」と思われるかもしれませんが、ルーン魔術の使用可能性が上がった(公式おすすめ通り「一季節に1回の冒険」で運用するとすれば、持っているルーン呪文は毎回使い切っても問題がないことになります)ことでプレイ感覚はかなり違うのではないかと思います。部位HPが5とか6とかいう世界に3D6ダメージとかが飛んでくるのでどうしたらいいの。というのは実際遊んでみないとわかりません。(ダメージブロックする《盾》とか回復呪文の《肉体の治癒》の使い方がかなり重要になってきそう)


かなりの大部の本のようですが、ルール部分はかなり少なく(30ページぐらい?)、その他はデータ類となっています(膨大なルーン呪文は圧巻)ので、それほどとっつきにくいことはなさそうです。


なんにせよ、長らく絶版だったルーンクエストが再び出版されるというのは、素晴らしいことです。完成版を楽しみに待ちたいと思います。