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七母神

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神話と歴史

 赤の女神の到来以前、女神の生誕地リンリディ地方は、カルマニア帝国とペントと赤の平原の騎馬遊牧民との間隙に位置する危険な辺境地帯であった。この地において、不平者、追放者、女祭らの一団が密かに会見し、史上初の途方もない儀式の準備を進めていた。そして1220年、カルマニアの妨害にもかかわらず彼らは目的を達した。彼らは異界や精霊界を探索し、世に知られることもなく永く失われていた女神の砕けた破片を見つけ出し、「時」の壁の中でどうにか彼女を生きた存在にすることに成功したのである。これが赤の女神の生誕であった。この呪文を紡いだ者たちは「七母神」と呼ばれ、彼らはあわせて一つのカルトとして信仰されている。

 1247年、赤の女神は不死性を得、宇宙にそのことを証明した。女神の創造を助けた者たちは彼女の存在により尊拝され、同様に神への道を見い出した。彼らは地上を離れ、不死性を得て女神のもとに加わった。

 女王ディー・ゾーラはアーコス川沿いの領地の支配者で、アラクニー・ソラーラの女祭だった。彼女はルナー神殿では「つなぎとめるもの」と呼ばれており、七母神カルトの治癒魔術の源である。

 魔女ジャーカリールは「糸紡ぐ老魔女」と呼ばれており、ジョード山脈のゾラーク・ゾラーンの女祭であった。彼女は神殿のルナー・エレメンタルの源である。

 ティーロ・ノーリは「若き生命」と呼ばれており、明らかに儀式のためトーランの街路から無作為に連れてこられた娘である。神殿においては「女神の給仕」とされ、救貧基金運動の中心となっている。

 イリピー・オントールは古書においては「褐色の男」と呼ばれており、ユスッパの知識神の司祭だった。彼はヤーナファル公の友人であった。

 ヤーナファル・ターニルズは「雄羊なる戦士」と呼ばれており、ユスッパのサトラップに追放された貴族であった。彼は後に主人たるフマクトを打ち負かし、ルナー神殿の戦神となった。

 ダンファイヴ・ザーロンは血に飢えた無法者であったが、儀式の最も危険な部分を引き受け、「探索者の橋渡し」と呼ばれるようになった。この成功により、彼は神殿において「門番」「守衛」「夜番」の役割を与えられた。

 “待つ女”は神話において神秘的な役割を果した無名の人物であり、その正体は外部の者には知られていない。

 帝国が建国されてより300年以上もの間、帝国の栄枯盛衰を通じ、この神々は共に生前に行ったのと同じ役割を果してきた。彼らはその人生で、世界にルナーの精神の閃きを灯す責任を負っていた。現在、不死となった彼らは、カルトに加わる全ての者にルナーの精神の閃きを灯す責任を負っている。帝国の盛衰によりカルトの人気も浮沈するが、帝国の力が強い時に前に立って見られるのはこのカルトである。

 教化のための寺院が作られる帝国辺境でカルトは特に力を持ち、ルナー化のための基地としての役割を果している。従って、彼らは女神の先触れであった如くに、常に帝国の先触れとなっているのである。帝国の内部でさえ、赤の女神のうわべを知ることで満足し、個々人の可能性や分派を求めずして七母神のみを信仰する者は多い。

 七母神は、死後の生は確かに存在し、信者には「死と生」の秘密への全ての鍵がある「赤の月」への門を教えるということ以外に何も保証しない。彼らは死後の生の証として、誇らしげに女神の死と散華、新生から消失、そしてそれに続く帰還を語る。《蘇生》はカルトの正規の職務であり、敬謙な信者は可能であれば大司祭によって死から呼び戻される。

 《蘇生》の及ばない者に対しては、その地方の風習の加味された葬礼が行われる。遺体は次の満月までルーン王や司祭によって保存されるが、その他の者は正当な方法をもって処理される。ルーン王と司祭が「創造の歌」を歌い、彼らの魂に“赤の月と「時」、そして存在の周期”へと加わるよう命じる。

 カルトは尋常ではない組み合わせのルーンを持っている。中央に「月」、その両側に「豊穣」と「死」というものである。多くのルナーカルトと同様、ルーンと直接結びついていないエレメントとの接触は限定されている。



2、カルトの生態

 七母神は辺境の守護を司るカルトであり、帝国の敵を排除し、帝国の友を迎え入れる責任を負う公的なカルトである。前者の様態として、カルトには激しく獰猛な戦士の下位カルトがあり、後者の様態として、偉大な赤の女神との面会を望む者たちを教育する教師の下位カルトがある。

 七母神のカルトは帝国辺境地域において、ルナー神殿の政治的・魔術的な力の代表となっている。ときに「占領者のカルト」と呼ばれることもある。ルナー影響下の地域において自己の便益を固めようと望む者ならば、このカルトとカルトの富には大いに興味を引かれるところであろう。第三期を通じて、ルナーは自国防衛を行うことができ、かつ帝国に忠実な属国をドラゴン・パスに作り出そうとして努力してきた。王たちは支配を許されるが、宗教的なヒエラルキーはこのカルトを通じて帝国に組み込まれる。ターシュ王国はこのような属国化が成功した一例である。

 カルトは帝国を好むものを好み、帝国を嫌うものを嫌う。つまり、帝国はルナーの周期の道に従い、彼らの赤の女神に従属するもの全てを好む。これには混沌の存在さえ含まれるのである。混沌の存在を受け入れることによって、多くのカルトが帝国の敵に回った。また、「風」と「月」、そのカルトの間には、「中空の天界」を争った時の起源的・神話的な反感が存在している。

 大聖日は女神が生誕した「闇の季」「混乱の週」「神の日」である。聖日は満月の日である。季節ごとの聖日は「幻影の週」の「満月」(ドラゴン・パスでは「荒の日」)となっている。


3、世界におけるカルト

 ほとんどの月のカルトと同じく、カルトはその母体となった組織と強い絆がある。赤の女神の生誕した帝国の深部、トーランの都が本来のカルトの中心地であった。この地から多くの宣教師が各地へ赴き、ついには赤の月の輝くところ全てに寺院が建立されるにいたったのである。全ての帝国属領地と君主領には中央寺院がある。中央寺院(もし必要であり可能ならば)独自の下位カルトと礼拝堂を持つ。しかし、それらはカルトの中心とされる教階制度に組み込まれている。

 七母神の中央寺院における組織構造はいずこでも同じである。首位として大女祭がおり、その下に七人の主任女祭が配され、それぞれが一つの下位カルトの責任を負う。通常、主任女祭には少なくとも一人以上の司祭が補佐としてつく。下位カルトには平信者や入信者が属する。

 七つの下位カルトはそれぞれ七母神の一人を表わし、月の満ち欠けの相に対応している。注意すべきなのは「満月の女祭」は存在しないということである。その地位はカルトの大女祭(儀式ではしばしば「赤の女神」と呼ばれる)にあてられる。代わりに、謎めいた“待つ女”を崇拝する「神秘の月」の下位カルトが存在する。彼らは指導者たちから特殊な指令のみを受け取る。「神秘の月」は一般的な下位カルトではない。その使命は大女祭の気まぐれや必要を満たすためのものである。

 中央寺院はその下位にあたる寺院(通常、主任女祭の好む神の名を冠する)を建立することもできる。例えば、アルダチュールではその陥落後に「七母神なるヤーナファルの寺院」が建立された。このような寺院は中央寺院と似た組織構造をとるが、その地位は通常より一つ階位の低い者によって占められる。例えば、下位カルトを束ねるのは主任女祭ではなく、入信者の役目となる。

 このような支部・小支部が(特に、七母神の中に個々の独自のカルトを持つものがあることも考え合わせると)ルナーの組織・政治を理解する際に混乱を生じさせる原因となっている。 各君主領・属領地の中央寺院(通常はその首都に置かれる)と昇月の寺院は、全て大寺院である。その下に属する寺院は主に小寺院と中寺院からなっており、各地方都市などに置かれている。社はほとんど見られない。社では《狂気》を教えている。

ルナー人と混沌のバランス

Lunar and Chaotic Balance

 世界中で帝国は憎まれているが、それはその信仰に混沌を含むからである。これは古の神々にとっては必要な態度であった。なぜなら、彼らの存在の根底には混沌への闘争があるからである。

 しかしながら、「時」の中で生まれた赤の女神は別の選択肢があった。彼女はそれを宇宙の神々の中で自身の力を維持するために活用した。彼女の秘密は「均衡」と「時」の中へ編み込まれ、地上世界の上をおおう月の周期となった。
 ルナーの教えはこの時代のほとんどの社会・宗教と比べて理解しやすい自由を提供している。しかし(秘密とはされているが)このような自由には危険がつきまとうものであり、ときに行き過ぎた実験によって引き起こされたルナー的な災厄が報告されている。しかし、宇宙的な自由を得るためには、無知覚の混沌の境界と虚無(the Void)とを真摯に理解することが必要とされるのである。だがこのような概念は世界にとっては異質であり、確立された慣習や宗教には、このような新奇な考え方はなかなか受け入れられない。ルナー人はもちろん、これを無知と不均衡の代物だと考えている。

 ルナー人だからといって恐ろしい混沌に身をさらす必要はなく、その教えでもこれらの陰鬱な道へ不用心に近づかないよう警告がなされる。クリムゾン・バットのような恐るべき混沌の顕現は、帝国に敵対する者たち以上に帝国市民に憎まれている。しかしながら、公式には混沌のエレメントは許容されており、それらの怪物に対しては恐怖以上のものを知らずに、ルナー市民は「それらの怪物はコントロールできる」という当局と宗教関係者の保証を疑いつつも信じているのである。

ルナーと混沌と敵

Lunars, Chaos, and Enemies

 ほとんどのカルトは混沌を嫌い、憎み、恐れているが、ルナーの教えはこの思い及ばぬ存在をその信仰に含んでおり、そのために世界の敵対者となっている。この影響について考えておく必要があるだろう。

 漠然とした論争の解決においては、感情が優先されない限りは実際性が決定要素となる。これは宗教の教えが明確に規定しない状況に個人が置かれた場合は、グローランサにおいても同じである。社会的要請、個人の感情、神々や精霊などはいかなる決定においても影響を及ぼす。

 生あるものにとって、行き過ぎた憎悪を抱くことは(特に憎悪の対象が高い戦闘能力を持っているときには)実際的ではなく、その対象が刺激されたとき、近くにいるときのみ危険がある──これが世界のルナー人に対する見解である。彼らはいかなる場所でも嫌われ、犠牲とされる。ルナー人はこの虐待を受け入れ、そのかわりに自らの道を進む。彼らは常に最悪に備えており、同様に「ルナーの道」を経験してみようとする者は誰でも受け入れる準備をしている。

 しかしながら、特定の状況下においては、非ルナー・カルトからルナー人を混沌の手先と見なすことがあり、これは何らかの事態を引き起こすことになるだろう。全てのルナー人が混沌と関係していると見なされるわけではなく、混沌や混沌に関わる力を進んで用いるもののみが、このような反応を引き起こす。これには混沌魔術を知る女祭や、カルトに入信してから一度でも混沌魔術を自身に投射したことのある者、混沌を崇拝する者が含まれる。

月と風

Moon and Air

 月の女神と嵐の神々の間の不和は根深く、永遠のものである。これは哲学的・神話的な理由より説明される。

 荒れ狂う嵐の神々は、宇宙の中では「流転する力」を象徴しており、その力には気まぐれな性質が欠かせない。彼らは自分たちが創り出す思いもかけない結果に価値をおいており、そのために引き起こされる災難については気にもかけようとしない。一方、月の女神はこの逆巻く衝突を従え、女神とその信者たちにとって予測のつく従者に変え、世界の形成にかかわる破壊的な力に秩序をもたらすのである。

 今までのところ、ペローリアにおいては「ルナーの道」が支配的であり、古き嵐の神々の神殿は女神に屈している。これは地上世界にも影響をあたえており、赤の女神の到来よりこの方、ペローリアの気候は著しく温暖になっている。かつてヴァリンドの荒野から南方へ吹き狂った氷雪の嵐は現在でもペローリアに降雪をもたらしているが、雪は一季の間しか残らなくなっている。ルナーの司祭たちは頻繁に〝氷の魔〟に戦いをいどみ、しばしば勝利を収める。こうして氷の軍勢は数を減らし、騎馬遊牧民が駆逐されてから150年間というもの、氷雪の暗い破壊的な力が帝国に被害を与えたことはない。

 ドラゴン・パスでルナーの支配の拡大は停止したかのようにみえる。おそらく、この近隣の地の嵐の神々の力が強大であるからだろう。もしかすると、赤の月の光はこれ以上遠くを照らし出さないのかもしれない。もしかすると、ルナー人がしばしば言うように「これは時間の問題に過ぎない」のかもしれない。

昇月の寺院

The Temple of the Reaching Moon

 この巨大な寺院構造物は実際には一つの小さな都市であり、属領地の緩やかに組織された中心地となっている。この中心地(砦と学院の両方)から、その地域を掌握し、「ルナーの道」へ改宗させるために、女祭、軍隊兵、学者たちが外へと出かけていく。

 改宗が進むにつれ、非常に長い儀式が執り行われる。この儀式によって、赤の月の光がゆっくりと外へと漏れ出し、その地域を飲み込んで、何年後かにはルナーの存在が確立される。この赤い光の外縁は「グローライン」と呼ばれ、ルナーの支配の境界線となっている。

グローライン

The Glowline

 赤の月は天空に鎮座して、彼女の息子が征服した全ての地を睥睨している。女神は帝国全土を見渡しており、そのため女神の領域の中ではどこからでも赤の月を見ることができる。

 ペローリア以遠では、「赤の月」は地平線の近くに見える。旅行者がその境界に近づくにつれ、女神は次第にはっきりと見えてくる。以下は、著者不詳の「ジョンスタウン文書」に見える記述である──

 「……ドラゴン・パスを抜け北へ旅するにつれ、薄い緋色が遠い地平線の上に糸のように見えてくる。グラスウォール砦に到着するころには、ドワーフ・ランを見下ろして、その光は北の空に血のように赤く、日没のように見える。
 「繁みが原を越えると、輝きはますます空高く広がり、その光が暖かく満ち溢れるようになる。バグノットがグローラインの境界である。そこでは地平線上に弧を描く真紅の色が、ところどころに薄く見える。
 「さらに北に馬を駆れば、月は地平線上にあるときよりも実際に見える大きさを小さくしながら、中空に昇るように見えるだろう。すなわち、月の天球に近づくにつれ、それはより小さく、より天空高く見えるようになるのである。これは全く珍しい光景で、前もって知らない者はまこと注意を引かれることであろう。……」

七母神

from STAFFORD'S ADRESS, RQ-Con2 Conpendium
GS…グレッグ・スタフォード AM…聴衆(Audience Member)

GS:……そう、ルナー人は改宗を行うよ。なぜならそれが世界を良くすると思っているからね。おそらく、ダラ・ハッパ帝国の中で。そして七母神のカルトは「改宗者のカルト」だ。でも、どういう風にか分かるかい? 私は空港に立ってパンフレットを配るような方法だと思うね。彼らは過去に改宗を行っている。シェン・セレリスがルナー帝国の一部から人間を一掃したとき、彼らは伝道者として各地へ散ったんだ。彼らは帝国を常態に戻すために教師として各地へ散った。だからそれはルナーの行ったことだ。彼らの宗教の主な力ではないし、必要なものでもないけれど、それによって人の移動が行われるので良く受け入れられている。そして七母神のカルトは人々に改宗を行うための手段を提供するんだ。


この記事はRQ第二版“Cults of Prax”の「Cult of Seven Mothers」をもとに、まりおんが第三版用に書き起こしたものである。